マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

メカニズムを意識した思考法でマーケティング戦略を考えよう

世の中の多くのマーケティング担当者に限らず、ビジネスを実践していく上で思考法を学ぶことは重要である。しかし、どんな思考法にも癖があり、どれか一つの思考法だけで多種多様な問題を解決することは不可能だ。より多くの思考法を学ぶことで問題に適した思考法を適用し、適切に処理することが出来るようになる。ここでは、経営戦略の思考法について紹介する。もちろん、マーケティングの課題を特定し、解決するためにも参考になる思考法である。

■「カテゴリー適用法」

一つ目の思考法は「カテゴリ―適用法」である。例えば「インテル社は儲かるのに、ノートパソコンが儲からないのはなぜか?」という問いに対して、「ノートパソコンは組み立てするカテゴリーだから儲からないが、インテル社の製品はデバイスというカテゴリーだから儲かるのだ」と答えるような思考法である。

確かに、「組み立て事業の利益率の平均」と「デバイス事業の利益率の平均」を比べればデバイス事業の方が利益率が高い。そのような事実から原因があるのではないかとアタリを付け、仮説を立てることで問題を特定し、上手くいけば他社の解決策を自社でも応用できるかもしれないと考えるやり方である。

しかし、この思考法は殆どの場合、破綻する。このインテル社の例でいえば、デバイス事業でも低利益の事業を探し出すことは非常に簡単だからだ。別の言い方をすれば、「なぜハトは空を飛べるのか?」という質問に「鳥という空を飛べるカテゴリーの動物だから飛べるのだ」と答えるようなものだ。問いに対して明確な答えを提示出来るような思考法ではないのだ。この「カテゴリー適用法」は、あくまで原因を突き止めようとするときの「きっかけを作る発想法」であって、深い思考法ではないことに注意すべきだ。 例えば、この「問題は●●と似ている」などと発想することで原因を特定しようとするやり方だ。


このような考え方をする人がいるのか?と思うかもしれないが意外といる。例えば、事例を集めたがる人や流行りのシステムを導入したがる人はこの思考法の持ち主である。他社の解決策を自社に当てはめようとするのは何も考えていない証拠だし、システムを入れれば問題が解決すると考えることもあまりにも思考が浅い。もちろん、きっかけとしては問題ないが、それに終始してしまうのは本当に問題である。

■「要因列挙法」

二つ目の思考法は「要因列挙法」である。この思考法は多くの企業で最も多用されている思考法である。カテゴリー適用法は特定のカテゴリーに当てはめて問題を特定しようとするやり方だったが、多くの場合は原因は一つではない。多くの要因によって一つの現象が起きている。そのため、「要因列挙法」は、漏れなく要因を洗い出し、有力な要因を列挙することで一つの現象が引き起こされていると考える思考法である。インテル社の例でいえば「メモリーではなくプロセッサーである」「デファクト・スタンダードである」「ブランドイメージが浸透している」という3つの要因によって利益率がもたらされていると考えるのである。こうすることで、利益率の低いデバイス事業と利益率の高いインテル社の違いを説明することが出来る。

しかし、この「要因列挙法」にも問題点はある。それは、各要因間における相互作用が考慮されていないことだ。例えば、この「要因列挙法」で改善策を検討する場合、多くの企業ではインテル社に劣っている要因を強化する施策を実施しようとする。つまり、プロセッサーとしてはインテル社と同等であるが、デファクトスタンダードになっていないし、ブランドイメージも良くないと考え、この2つの要因を改善するための施策を検討し始めてしまう。例えば、ブランドイメージを改善するような広告を投入しようなどという施策に至ってしまうのだ。

■「メカニズム解明法」

しかし、インテル社の「ブランドイメージ」や「デファクトスタンダード」は様々な要因同士の相互作用によって生み出される好循環のメカニズムによってもたらされている。その各要素の相互作用を描いたのが下記のような図である。

インテル社の利益率は、直接的には「高いシェア」と「高い交渉力」によってもたらされている。しかし、その「高いシェア」と「高い交渉力」は、ソフトなど補完財の充実によってもたらされているし、さらに、”Intel Insideキャンペーン”によって醸成されたブランドイメージによっても「高いシェア」と「高い交渉力」がもたらされている。そして、「高いシェア」によって、さらに補完財の充実が促進され、「高い交渉力」によって生み出された利益で”Intel Insideキャンペーン”を実施するという好循環メカニズムによって成し遂げられているのだ。

このように、各要因が生み出す因果関係・相互作用・メカニズムまで考える思考法が「メカニズム解明法」である。「要因列挙法」では要素間の時間的側面と因果的側面がどうしても薄くなってしまう。しかし、そのような点も考慮しなければ間違った施策もしくは効果のない施策を実施することになってしまう可能性があるということだ。

インテル社の競合会社が、”Intel Insideキャンペーン”のような施策を実施したところで、既に高い交渉力を持ったインテル社を上回ることは困難である。しかし、要因列挙法ではそのようなレベルの解決策になってしまう傾向があるのだ。

マーケティングは戦略である。自社の限られた資源を使って最大限の効果を上げることが目的である。そのために、「選択と集中」が必要となるわけだが、間違った思考をしてしまうと、「効果のない選択と集中」に貴重な経営資源を投入することになりかねない。売上を向上させるために、「新規顧客の増加」「購買頻度の増加」「1回購入額の増加」などを列挙し、一つ一つに対応策を考えていくことがいかに期待出来ないかがお分かりいただけるだろう。「新規顧客が獲得できない原因は、どんな要素がどのように影響しあった結果なのか?」というメカニズムを理解しようとする思考法で考えることで本当に意味のある施策が生まれてくるのである。

参考文献:「経営戦略の思考法」沼上幹

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