顧客の価値観・考え方に注目するマーケティング

マーケティング

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マーケティングの教科書によると顧客の「ニーズ」を把握しそれを満たすことが重要であると書かれている。顧客がどんな課題や困難に直面しているのかをまず知ることから始まり、それらを解決することがマーケティングであると言う。

ニーズとは何か?「フィリップ・コトラーの定義によれば、人間生活上必要なある充足感が奪われている状態のこと。(wikipediaより)」だ。例えば、喉が乾いているので水が欲しい状態のことをニーズという。そして、その「ニーズを満たす(特定の)モノをウォンツ (wants) と呼ぶ。(wikipediaより)」例えば、ミネラルウォーターが欲しいはウォンツである。

また、「喉が乾いたので水が欲しい」というニーズを持ったとしても、置かれた状況によってニーズは変化する。結果としてウォンツも変化する。

どういうことかというと、仮にあなたが営業マンで夏の炎天下を歩き回ってどうしても水が飲みたいと思ったとき、もし一人きりで誰も周囲にいなければ公園の水を飲むかもしれない。でも、数人が同行し、かつ取引先の人がいるような状態であれば、どうしても水を飲みたいと思っても目の前の公園の水は飲まないだろう。我慢できないのであれば、コンビニか自販機の水を飲むはずだ。なぜなら、取引先や同僚がいる手前、公園の水を飲むような非常識的なことをして変な目で見られたくないからだ。

つまり、公園の水は純粋に「喉が乾いたので水が欲しい」というニーズを満たすウォンツだが、コンビニや自販機の水というウォンツは、「喉が乾いたので水が欲しい」という身体的ニーズだけでなく、「社会常識ある人間でいたい」という社会的ニーズをも満たすウォンツであるということだ。

よく企業として想定していなかった使い方をされる顧客によって売上が伸びたというようなことがある。これは多くの場合、企業の製品サービス(ウォンツ)が想定していたニーズだけでなく、顧客の他のニーズも満たしていたから発生するものだ。企業によってはうれしい誤算だが、ニーズを正確に捉えていなかったという意味では喜ばしいことではない。売れない製品サービスというものは、概してニーズを正確に捉えられていないからだ。

しかし、このように書くとニーズを満たしていれば良いのだと感じるかもしれないが、全くそうではない。ニーズを満たしても売れない場合もたくさんある。それは、本当にお金を出してでも解決したいニーズではない場合だ。顧客の言葉を借りれば、「確かにその方がいいけど、別にどっちでもいい」という状況だ。早く到着する輸送方法の方がいいけど、1時間くらい早くなるくらいだったら、社内の変更作業のことを考えれば今のままでいいという場合もそれに当たりる。その程度のニーズに予算を割り振るのは賢明ない。

近年、このような顧客は非常に増えていることを皆さんも感じることだろう。「別にどっちでもいい」という感覚は企業側からだと困った問題だが、一旦消費者としての立場になって考えてみると分からないでもない。私たちは多くの面で満たされている生活をしている。

このような状況でマーケティング担当者はどのように考えるべきなのだろうか?ニーズをどう捉えればいいのだろうか?
1つのヒントは、上記の例のように社会的ニーズなどの顧客が無意識のうちに「こうなりたい」「こうありたい」「こうは見られたくない」という視点を用いることだ。人間は無意識のうちに社会人としての正しい価値観や理想的な父親・母親、という考え方・フィルター・尺度を通して物事を判断している。そして「こうなりたい」「こうありたい」「こうは見られたくない」は常に時代によって変化している。さらに言えば、上記の公園の水を飲むか飲まないかのように誰と一緒にいるかによっても用いる価値観は違う。人間は時代やその時の状況によって考え方・フィルター・尺度を無意識に使い分けている。そのことに注目することで重要な視点を見逃す可能性は低くなるだろうし、顧客に変化があっても気づきやすくなるはずだ。

どのような考え方・フィルター・尺度を用いているから、自社の製品サービスを選んでくれているのか?もしくは、選んでくれないのか?という視点で顧客を知ることで対策の方向性が見えてくる。

マーケティング担当者の仕事の基本は「顧客を知ること」だというのはそういう意味だ。なぜ、顧客がそのように感じ・考え・行動するのかを科学的に解き明かすことだ。