トヨタの「KINTO」は成功するのか?マーケティング視点で考える。

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トヨタがクルマのサブスクリプションに乗り出した。その名も「KINTO」

プランは「KINTO ONE」「KINTO SELECT」の2種類が用意されている。ONEでは、「プリウス」「カローラスポーツ」「アルファード」「ヴェルファイア」「クラウン」の5車種から1車種を選んで3年間乗り続ける。月額料金はグレードやオプションによって異なり、例えば、プリウスでは月額4万9788~5万9832円(税込み。以下同)。クラウンなら9万7200~10万6920円となる。(秋以降には対象車種を拡大する方針 )
一方、SELECTは高級車「レクサス」専用のサービスで、「ES300h」や「IS300h」などの6車種を6カ月ごとに乗り換え、3年間利用するというスタイルだ。月額料金は19万4400円となる。

2019年02月05日 日経クロストレンド

昨年、紳士服のAOKIがスーツのサブスクリプションサービス「SUIT BOX」を開始した。しかし、6ヶ月間も経たずにサービスを終了してしまった。AOKIのサブスクリプションサービス「SUIT BOX」が撤退した理由として担当者は要約するとこのように語っていた。

「SUIT BOX」は若者のスーツ購入を促進させるためのサービスとして始めたものであったが、多くの申込者が店舗でスーツを購入する40代を中心とした年代であったことでカニバリが発生してしまっていたことが大きな要因。本来であれば20代・30代を中心とした若者をターゲットとしたにも関わらず若者が利用してくれなかった。(日経クロストレンドより要約)

このブログの以前の記事で書いたが、そもそも若者がスーツを着なくなった原因は料金ではなく、「スーツを着る理由がない」「スーツがダサい」「おじさんっぽい」などスーツそのものに対する「魅力の無さ」であった。そのため、どんなに金額を下げたとしても「スーツを着たいと思わせなければ若者は動かない」と記述した。

この失敗例を参考にするとトヨタの「KINTO」はどうなるだろうか?
つい先日の記事で「若者のクルマ離れ」について書いたが、そこでは「若者のクルマ離れ」の原因を「クルマに乗ることの価値が低くなっていること」が要因の一つではないかと述べた。50代の人であれば、クルマに乗ることがある種のステータスであり、クルマを持ち乗ることが大人になることの証明であったが、現在の若者にはそのような考え方は存在しないために、クルマに対して無駄にお金をかけなくなったという趣旨である。もちろん、可処分所得の減少など様々な要因が絡んでクルマ離れが起こっていると考えられるが、お金があってもクルマを求めない人が増えていることは車メーカーとしては非常に危機感を持たざるを得ない現象である。

今回開始する「KINTO」は若者のクルマ離れの抑止も目的の1つであるようだ。この「KINTO」からトヨタのクルマに乗ってもらい将来的に購入してもらうことを想定しているのだろうか?しかし、AOKIの「SUIT BOX」の失敗と同じようなことは起きないだろうか?特に都心の若者にとっては新たに駐車場を用意することは非常にハードルが高く、都市部で「KINTOが初めての車所有」という人は殆どいないだろう。都市部で「KINTO」を利用するとすれば既にクルマを所有している人で他のクルマにも乗ってみたいと思う比較的クルマに興味の高い人にならないだろうか?駐車場はあるしハードルは低いと考えられる。

また、地方においてはどうだろう?クルマに興味のある若者であれば多少の負担が高くなったとしても十分に可能性はあるサービスだろう。しかし、そもそもクルマに対して興味はなく単なる移動手段としてしか考えていない若者にとっては、これまでのクルマ維持費よりも高くなる料金を払ってまでサービスを利用する価値はないのではないだろうか?

これまでクルマに限らずサブスクリプションで成功しているカテゴリーとしては比較的商品への愛着があるものに多いような気がしている。バックのサブスクリプションサービス「ラクサス」など、そもそもバッグを持つことの価値が高いものについては成功しているようなイメージである。「SUIT BOX」もスーツの価値を知っている40代を中心とした人が利用した。商品への高い興味が様々な商品を所有することのメリットを高めているのだと考えられる。

しかし、そもそも商品への愛着や興味が高くないものについては定期的に商品を替えることのメリットは低い。現在のところトヨタの「KINTO」のサービス概要を見る限りクルマへの興味の高い人には利用されるだろうという印象はあるが、この「KINTO」によってクルマに興味を持ってもらえる可能性は大きくはないだろうと感じる。

しかし、トヨタの「KINTO」の担当者も言っているが、「まず、始めてみる」という感じがあるので、反応を見てサービスの内容を変えていくことは良いことだと思う。今後の対応に注目である。