マーケティングの仕事は「シナジー効果」を生み出すことである。

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マーケティング担当者の仕事は多岐にわたる。ある部分ではマーケティングの専門家として動かなければならない場合もある一方で、各専門家を束ね、全体の最適化も求められる場合もある。そういう意味でマーケティング担当者には様々な知見が必要とされるものだ。

特に今回はマーケティングの専門家としてではなく、各専門家を束ねる部分での役割について書きたいと思う。というのも、結局のところマーケティング戦略は実施されて初めて意味があるのであって、企画しただけでは何の意味もないからだ。いかに戦略を実施するのか?は、マーケティング担当者として絶対に必要なスキルだからだ。

ここではまず「シナジー効果」について考えたいと思う。なぜなら、マーケターは各専門家の知見を束ね「1+1=2」ではなく「1+1=3」以上を達成しなければならないからだ。シナジー効果とは、複数の製品や事業を同時に遂行している方が、単独で遂行している場合よりも高い経営効果が得られるという効果のことである。一般的には「1+1が2になるのではなく、3にも4にもなる」という効果として知られている。

例えば、レーザープリンターと複写機のメーカーが同じ部品を使うことで安く製品を作れることや機械技術者と電子技術者の相互作用によって新しいアイデアが生まれやすくなるといったことである。

シナジー効果を出すべきだというのはもっともな戦略のように感じる。しかし、このシナジー効果に対する最も大きな誤解は、まるでシナジー効果を実現するために乗り越えるべき困難がないと思っていることである。

例えば、レーザープリンターと複写機の部品を共有化することでシナジー効果を得ようと考えたとする。たしかに、複写機だけの事業を実施する場合よりも2つの事業を展開した方がメリットが多いように感じる。しかし、部品を共有化することは簡単なことではない。設計段階から相当な工夫が必要であり、相当な追加コストが必要となる。

また、機械技術者と電子技術者の濃密な相互作用によって新しいアイデアが生まれるはずと考えシナジー効果を期待するのかもしれない。しかし、機械技術者と電子技術者の濃密な相互作用のためには、業務以外にも時間を作ってアイデアを創出する必要がある。どちらともにシナジー効果のための時間的コストを支払わなければシナジー効果など発揮できないのである。

そして、このシナジー効果を得るためには、様々な苦痛に満ちた議論をしなければならないことが多い。一方の都合に合わせた部品を使わなければならないとか、バックグラウンドが異なる人に説明するために、大量な資料を作成しなければならないとか、多くの不快なシーンが多く発生するものだ。それを乗り越えてこそシナジー効果が発揮されるのである。

上層部がシナジー効果を叫んでも実現しないのはこのような理由がある。現場の大きな痛みと苦痛というプロセスがあることを上層部が理解しないからこそ、現場が動かないのである。2つ存在すればシナジー効果が生まれるわけではないのだ。

そして、マーケティングの仕事は、多くの専門家が集まって実施される仕事である。マーケター以外にもデザイナー、ディレクター、システム技術者、コピーライター、編集者、データサイエンティスト、営業マンらが集まって1つのプロジェクトが進められる。

マーケターがすべきことは、彼らの専門的業務をいかに組み合わせてシナジー効果を発揮させるかである。単純に多くの専門家を引き合わせただけでは何の相乗効果もシナジー効果ももたらさない。マーケターは指揮者であり、各専門家の仕事を理解して最大限の能力を発揮してもらうと同時に、全体として「1+1=2」ではなく「1+1=3」もしくはそれ以上にすることである。

さらに、どんなにデータ分析が正しくてもデザインがダメなら「1+1=0」になってしまうこともある。また、セグメントとターゲティングを間違えてしまえば他の専門家がどんなに頑張っても「1+1=0」になることもある。マーケターの仕事においては1+1が必ず2になるとは限らないのである。能力のないマーケターが多くの専門家を束ねることで結果がマイナスになることはよくあることなのだ。

つまり、マーケターとして顧客を分析してセグメントし、ターゲットとコンセプトを決めれば良いのではない。データを分析して何らかの示唆を示せば良いのでもない。デザインが美しければ良いのでもないし、適切なタイミングでメールやSNSを送れば良いわけでもない。マーケターの仕事は全体最適化を成し遂げるためにあるからだ。

マーケターは、ある専門家の都合に合わせたやり方や考え方を他の専門家に適用させなければならないとか、バックグラウンドが異なる専門家に説明するために、大量な資料を作成しなければならないとか、多くの不快なシーンが多く発生する中で、いかに各専門家が心地よく仕事をしてもらうか考え実行する役割なのだ。それを乗り越えてこそシナジー効果が発揮され、マーケティング戦略が効果を発揮するのである。

近年のマーケターに求められる知識はより幅広く、より専門的になってきている。全てをマスターすることはできなくても、各専門家を束ね1つの方向に導くリーダーシップはマーケティング戦略を実現させるために絶対に欠かせないスキルになのだ。

参考文献:「経営戦略の思考法」