なぜ「STP」で上手くいく企業と失敗する企業があるのか?村田製作所のマーケティング事例から考える。

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マーケティングの基本と言えば「STP」である。セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングである。多くの企業がこの理論をもとに施策を実施するが成功する企業ばかりではない。中にはセグメントしてターゲティングしてしまうと市場が小さくなり過ぎて意味がないとか、ポジショニングしようにも自社の資産ではポジショニングしようがないとかいう人もいる。

確かに、どの企業でもSTPが適切な手段になるわけではない。STPは基本的な理論であり、自社の特徴や環境に合わせて柔軟な発想で取り組まなければうまくいかないことのほうが多い。教科書で読んで早速やってみました~で上手くいくわけではないのだ。

このSTPを上手に活用している企業の事例を今回はご紹介したい。村田製作所である。有名な会社なので誰もが知っているだろう。この企業の主要事業の1つが「積層セラミックコンデンサ」である。スマートフォンや自動車などに大量に使われている部品である。村田製作所は、この積層セラミックコンデンサにおいてSTPを実践している。自社の強みを発揮できる市場を特定し、その市場の中で自社の優位性を発揮できる取り組みを実践しているのだ。

しかし、市場を絞り込む一方で取引がある企業数は10万社にも及ぶ。多くの企業が市場を絞り込むことで取引企業数が少なくなるものだが、村田製作所は違う。市場を絞り込むことで取引が少なくなる領域をあえて避けているともいえる。そこが非常にうまいところだ。自社の強味を発揮できる市場に絞り込むといっても単純に絞り込んではいけないということだ。絞り込むことで取引社数が少なくなることは非常にリスクが高まる行為であり、かつ売上のボリュームも少なくなる可能性が高くなる。それは「魅力的な市場とはいえない」。自社の強みが発揮できる市場であるが魅力的ではない市場を選んでしまうことはSTPでよくある失敗例である。市場を様々な角度から分析し強味が発揮できることと魅力度という2つの条件を満たす市場を見つけ出す分析力と発想力が必要なのだ。

上記ではセグメントとターゲティングの話をしたが、次はポジショニングの話である。村田製作所は、この積層セラミックコンデンサ市場において関連する部品すべてを供給できる企業であり、かつ企業ごとに製造工程を変えることのできる企業である。積層セラミックコンデンサを大量生産することが出来る企業は沢山ある。しかし、大量生産することが出来る企業の多くはその部品のみしか製造することが出来ない(製造工程も同じ)。しかし、村田製作所は関連部品も製造しており、企業に合わせて製造工程を変えながらも大量生産が可能である。この技術は他社には真似できないことであり、村田製作所の優位性を発揮するポジショニングとなっている。結果として価格競争に巻き込まれないだけでなく、関連部品も併せて販売することが出来ているのだ。

どんな企業も村田製作所のような技術力とノウハウがあるわけではない。そのため、ソフト面や人材など様々な側面から自社の優位性を見つけ出さなければならない。ここは非常に難しい部分だ。また、経営者の判断が重要な部分でもある。村田製作所においてもこの優位性を保つための投資が継続的に行われているように、どのような部分を優位性にしたいのか?どのような部分で生き残っていくのか?という経営者の判断も重要なのだ。

また、村田製作所では、多くの取引先企業を持つことで市場を知るための情報ネットワークを構築することになった。結果として今後成長する分野や企業の情報を営業活動を通じて入手することが可能になっている。例えば、iPhone5が減産された時には、多くの部品会社が同様に減産せざるを得なかったが、村田製作所は前年を上回る生産量を記録した。STPを上手く活用した企業とSTPを上手く活用出来ない企業の差はこういう時に大きな差になる。

上述したようにSTPは基本的な考え方である。しかし、それを上手く活用しその効果を継続するためには自社や市場を見る分析力や経営者の強い意志、継続的な優位性を保つための投資など様々な要素が必要になるのだ。

参考文献:全史×成功事例で読む「マーケティング」大全