「まず、出来ることから始めるべきだ!」
そんなことを先輩や上司から言われたことがあるのではないだろうか?しかし、このような出来ることをずっと続けていても本質的な問題は解決しないことが殆どだ。さらに、出来ることを沢山実施しても売上・利益への貢献度は低い。沢山頑張っているのに、なかなか伸びない状態になる。なので、別の人はこう言う。
「最もインパクトが高いところから始めるべきだ!」
しかし、これは実現が難しい。多くの場合、難しい課題であるためにどのくらいの時間とコストが必要となるのかが分からない。この種の課題には企業のトップレベルに新しく入社した役員が取り組んでもいつになっても結果が出来ない。いつの間にか、役員は去る。
では、企業はどの課題から手を付けるべきなのだろうか?一つの方法として提示されているのが、上記の2つの考え方を合算した方法である。
「出来ることから始める」ことのメリットは「スピード」だ。社内の体制を変えることを想定しないことが殆どであり、能力的にも実施可能であるから「出来ること」に分類される。また、社内体制を整えるスピードが速いので、結果が出るスピードも早い傾向がある。これまでの能力を使って勝てる可能性の高いフィールドで戦うからだ。また別の話になるが、この方法は社内に新しい手法を取り入れる際などには適している。すぐに結果が出るので、決断を早く下せるからだ。
しかし、上記に述べたようにこれだけではインパクトは薄い。そのため、上記のスピードの軸にプラスしてインパクトの軸を加えるのだ。そうすると下記のようなマトリクスが出来る。

7番を選ぶ人は、インパクトを重視するあまりスピード感がなくなり失敗する。一方、5番を選ぶ人はスピード感はあって忙しくなる割には売上・利益は向上しない。つまり、私たちが本来選ぶべきは間違いくなく1番であるということになる。スピード感を持って課題を解決することが出来るもので、かつインパクトがあるものである。
一度、今取り組んでいることがこのマトリクスのどこに当たるのかについて検討してみるとよい。ほとんどの場合は、5番に該当することになる。なぜなら、1番や7番は日本の典型的な組織である場合、取り組むのが難しいからだ。1番や7番を解決するためには、社内各署の協力が必要であり、それを動かすだけの権限はマーケティン部にはないからだ。だからこそ、マーケティング部は各部署を横断する存在でなければならないと言われるのだ。
しかし、1番の問題はふつうは社内で既に課題として共有されており、経営層によって解決に取り組んでいることが多い。そのため、7番だけは取り組まれずにいつまでも残ることになる。
では、どうすれば7番は解決することが出来るのか?一つの方法は、7番を1番のような課題にすることである。つまり、7番の課題の問題はスピードのなさだ。いつまでかかるか分からないことが問題なのだ。であれば、どうすれば期限を区切ることが出来るのか?という質問を投げかけることだ。そうすると、その課題をイシューツリーで分解することが有効であることに気づく。
よく言われるように、「課題を解決出来る大きさに分解する」のだ。そうすることでいつまでかかるか分からないものではなくなり、さらに検討を進めていけば、もっと早く解決できる方法を見つけることも出来る。「課題を解決できる大きさに分解する」ことはスピード感をもって解決するための最初の一歩なのだ。
そして、こうすることで社内各署の協力も取り付けやすくなる。各署で何をいつまでにすべきかということが明らかになり、コストも明確になってくるからだ。こうなれば、役員や社長の了承も取りやすくなるというものだ。
一つの考え方として参考にして頂ければ幸いである。
参考文献:問題解決と価値創造の全技法