マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

「睡眠カフェ」は流行るのか?マーケティング的に考えてみた。

ネスレ日本は2月18日、コーヒーを飲んで30分~3時間の睡眠を取れる「ネスカフェ 睡眠カフェ」(東京・大井町)を、3月6日にオープンすると発表した。
(中略)
睡眠カフェでは、30分~3時間の睡眠前後にコーヒーを飲むことで、良質な睡眠体験が得られるという。店舗にはフランスベッド製の高級ベッド6台と最高級リクライニングレザーチェア4台を用意し、利用者の好みに合わせて選べる。ベッドの場合は、マットレスや枕の固さも選択可能。

ITmedia New 2019218

非常に面白いサービスであるが、顧客はどのようなフィルター・思考枠を通してこのサービスを評価するだろうか?どのような人に受け入れられ、どのような人には受け入れられないのか?人間が無意識のうちに使い分けるフィルター・思考枠を基準にして「睡眠カフェ」の可能性と課題について考えてみたい。

睡眠カフェというサービスを知って、顧客は下記のような2種類のフィルター・思考枠を想起すると考えられる。

(1)<サービスに対してポジティブなフィルター・思考枠>
・睡眠不足は、仕事の生産性・幸福度・能力を下げる。
・適切な睡眠によって生産性が上がり、幸福度が増す。
・仕事で煮詰まった時に、寝ると良いアイデア・良い仕事が出来る。
・睡眠への投資は良い結果をもたらす。
・カフェなどでは騒がしくてリフレッシュできない。

睡眠カフェを知った時、上記のようなフィルター・思考枠を想起した人にとって、睡眠カフェは価値のあるサービスと認識されるだろう。しかし、下記のようなフィルター・思考枠を想起する人もいるだろう。

(2)<サービスに対してネガティブなフィルター・思考枠>
・仕事中に抜け出せない
・普通のカフェで寝るので十分
・価格的に価値を見いだせない
・大井町まで行って睡眠を取ることに価値を見いだせない。

このようなフィルター・思考枠を想起した人にとっては、睡眠カフェは注目する必要がないサービスと映るだろう。

この睡眠カフェを受け入れてくれて、実際に来店してくれるのは、ポジティブなフィルター・思考枠を想起した人であることは間違いない。睡眠の長さや質が仕事に影響することを感じているものの、カフェでリフレッシュや睡眠を取ろうにも騒がしくてうまくリフレッシュできないもしくは、そのような場所や機会がないと感じている人にとっては行ってみたくなるサービスである。

しかし一方で、そもそも仕事を抜け出せる職種や立場ではない人にとっては、利用したくても利用できないわけでターゲットにならない。また、よくカフェで寝ているので問題ないと感じていたり、30分で750円も支払うことに抵抗感を感じる人も利用することはないだろう。さらに、大井町まで行って睡眠をとるという行為に高いハードルを感じる人もターゲットにはならない。おそらくだが、山の手線沿線であれば唯一品川駅周辺の会社に勤めている人だけがターゲットになり得る。

そのようなことを考えると、どんな時にどんな人が利用するのかが見えてくる。

<実際の想定される利用シーン>
・睡眠に投資(30分750円~)する意味と価値があると感じることが出来る人が
・気持ちをリフレッシュしたいときに
・仕事の合間に利用する
だろう。

そうなると下記のような人が利用することが想像される。

<ターゲット>
・30代以上(20代は睡眠に投資する価値を感じにくい)
・考えることが仕事の人(短時間の睡眠が仕事の質に大きな影響を与えることを知っているから)
・仕事する時間や場所を自分の裁量で決めることが出来る職種・立場の人

睡眠カフェなのだから、睡眠不足を感じている人はターゲットに入らないのか?と感じる人もいるかもしれないが、個人的には入らないと考えている。睡眠不足にも色々ある。そもそも深夜まで仕事をしなければならないから睡眠不足の人もいれば、ベットに入っても寝れないので睡眠不足にある人もいる。仕事上の問題が原因であるならば、睡眠カフェは面白いと感じるだろうが、仕事を早く終わらせることの方が優先度は高いことになるし、夜眠れない人にとっては昼間に寝ることによって夜寝れなくなることに恐怖を与えることになる。

睡眠不足を感じていても、慢性的な問題を睡眠カフェの短時間の利用によって解決できると考える人はいないだろう。また、毎日利用できるものでもない。

睡眠カフェを利用することで効果を感じてもらいリピーターになってくれるのは、睡眠不足を感じている人ではなく下記のような人たちだ。

例えば、明日までに企画をどうしても考えなければならないのに、色んな情報があり過ぎて頭が整理できなくなって疲弊し、この状態では良い成果物を上げることが出来ない状態になっている人だ。このような人は、一旦寝ることで頭が整理されて、思考力が戻ることを実感としてよく知っている。だから、お金を払ってでも寝ることの重要性と価値を十分すぎるほど知っている。

こういう人こそ、睡眠カフェの意味と効果を最も感じやすく、リピートしてくれる人だ。このような人をターゲットにしてコミュニケーションすることで売上・利益を上げることができるようになるはずだ。当たり前だが、睡眠カフェに価値も効果も感じられない人を呼び込んではいけない。そのような価値と効果を感じない人を呼ばないようにするのもセグメンテーションとターゲティングの大切な役割である。

しかし、そう考えると今回の睡眠カフェ@大井町店には、いくつかの不安要素がある。私が感じた不安要素を2つ記したい。

1つ目の「不安要素は場所」である。
正直なところ、考えることが仕事の人が大井町にいる印象はない。個人的な感想であるが、広告関係とかコンサルティング会社とか営業マンの人に受けそうなサービスである。大井町の隣の品川であればそのような仕事をしている人が多くいる印象があるので、需要はあると思うが、大井町にそのような人(効果と価値を感じられる人)がどれだけいるのか?仮に品川から人を呼び込むことを想定しても、品川から大井町まで行って30分仮眠を取って戻るだけでも1時間30分は見ておく必要がある。そんなことまでする人がどれだけいるのか?

2つ目の不安要素は、「当日予約できて眠れるか」どうかである。
最も効果を感じるのは頭が疲労困ぱいの人である。しかし、いつ疲労困ぱいになるのかは誰も知らない。2月23日の15時から頭脳が疲弊して良い成果物が作れなくなることを知っている人はいないのだ。だから、眠る必要になった時に眠れなければ意味がない。明日眠れても価値にならないのだ。

この睡眠カフェは予約出来るようだが、予約したその日に睡眠を取ることが出来るのだろうか?もし、混雑しているからといって、翌日に予約しても意味も効果もなくなってしまう。ベッドが10台くらいしかないようだが、大きな機会損失になっていずれ忘れ去られないだろうか?

翌日に睡眠カフェを予約しても睡眠カフェに行くまでに一睡もしないわけじゃない。殆どの人は、その前夜寝てしまっているわけだから、自分自身で問題を解決してしまっている可能性が大である。仮に予約してしまったからと行ってみても、そもそも頭脳は疲れていないので、効果は感じられないだろう。もし、睡眠カフェを上記のようなターゲットに対してサービスを展開するのであれば、「いつでもすぐに利用できること」が大切な要素になるが、それは可能なのだろうか?

睡眠カフェを最大限活用するのであれば、あらかじめ午前中から仕事を詰め込んで疲労がたまるであろう時間帯を狙って予約しておく活用方法だろう。しかし、このようなやり方でしか効果を実感できないとすればかなり利用しずらいサービスになってしまう。睡眠を取りたいときに取れたほうがよい。

この睡眠カフェは、面白い取り組みではある。睡眠に課題を感じている人は確かにいる。しかし、彼らが満足してもらうためには、睡眠後のスッキリ感を感じてもらう必要がある。そのスッキリ感は睡眠前の状態が悪くなければならない。来店する人のコンディションによって良い体験になるのか、意味のない体験になるのかが決まるのである。

そういう意味では、市場はとても小さいと考えられ、全国規模では展開しないだろう。寝具メーカーやベッドメーカーとの良好な関係が続く限りは続くのではないだろうか。

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