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瀕死のスキー業界にはマーケティングが必要だ。

スポーツ用品販売大手のアルペンが、体験型アウトドア店舗に転換することを発表した。アルペンと言えば、スキー用品を主に販売する小売であるが、近年のスキー・スノボー人気の低迷が大きく影響したようだ。外国人によってスキー場の運営は維持できているものの個人的な感想を言えば、今までよく持ちこたえたなという印象だ。外国人がいなければとっくに潰れていてもおかしくはなかったのではないだろうか。日本人がスキー場に戻ることはあるのだろうか?

昔はテレビ東京で「SKI NOW」というただひたすらスキーヤーが滑っている映像を音楽に載せて放送する番組があったり、「私をスキーに連れてって」という映画がヒットしたりしたのは今は昔である。昨年にもスキー関連雑誌が廃刊になるなど冬になればスキー場に行っていた私としては少し寂しさを感じなくもない。高校生・大学生のころは、毎週のように池袋サンシャインのバスターミナルから深夜バスに揺られて日本全国のスキー場に行ったものである。

それにしてもスキー業界の低迷はなぜ起こったのだろうか?私は、スキー人気の低迷も、クルマ離れと同じような原因だと感じている。

クルマもスキーもバブル期に最盛期を迎えているわけだが、その原因は「クルマは持って当たり前(借金をしてでも持つもの)」「冬はスキーに行くもの」という理由もないイメージが先行していたからである。ある意味、その同調圧力とも言える流行に乗りに乗ってお客様を観察して変化に対応する能力が追い付かなかったところがあるように感じる。

その後起こった景気の低迷・可処分所得の低下・価値観の多様化など様々な変化にスキー関連業界は殆ど何もできずにいた。実際、リフト券にしてもスキー用品も私が子供の頃から殆ど変化していない。売上が客足が遠のくのをただ見ていただけのような気がしてならない。

とはいえ、様々な取り組みをしているところもある。あるスキー場では19歳はリフト券無料にするなどして来場者が増えたというニュースがあったりしたが、このキャンペーンは基本的にスキー場に来てもらえれば魅力が分かってもらえるはずという考えに基づいた施策のため、継続率は上がってもスキー場の収益面からすれば満足いくところまではいかなかったはずだ。他にも夏に様々な施策を実施することで客足を呼び戻そうとする取り組みなど毎年のように聞かれるが、成功しているとは言い難い。

そもそも、スキー・スノボーが面白いと感じるためにはある程度上達しなければ分からないわけで、そこにスポーツ関連のマーケティングの難しさがある。大人になってもスポーツを継続している人の多くは中学・高校と部活で経験したことのあるカテゴリーに限定される傾向にある。今でもスキー・スノボーをやっているのは両親によくスキー場に連れてきてくれた経験があってスキーのそこそこ出来るような人達だろう。

また、スキーは冬でしか出来ないという制限や山まで車かバスで行かなければならず時間がかかる。さらに天候によって楽しさは全く違うし、高額なウェアや板が必要になるなど(レンタルするにしても)とにかくお金がかかる。スキーはとにかくいろんな制限があるスポーツなのだ。

しかし、それら制限を活かす方法もあるような気がしてならない。以前の記事で「京都の花街」について書いたことがあるが、花街はその「一見さんお断り」という伝統的なルールを逆に活用することで小さくなりながらも継続することが出来ている。舞妓さんや芸妓さんの数も下げ止まりつつある。その「成長を制限すると思われた要素が衰退を食い止めている」のである。

スキー業界もそのあたりに復活へのヒントがあるような気がする。ゴルフなど社会人になってからやるようなスポーツは、仕事に役立つ部分もあるなど、スポーツの面白さだけでない新しい属性を持つことで人気を保つ可能性もある。

ちなみに、私がスキーを辞めた理由は、一緒に行く人がいなくなったからである。学生時代は友人も私も時間があるので当たり前のように行っていたが、社会人になると誰もが1月2月3月は忙しくそんな余裕がなくなる。結果、スキーから遠のいたのである。本来であれば、お金に余裕が出てきた社会人こそターゲットとすべきところだが。一緒に行こうと強烈に誘ってくれる人がいれば違ったかもしれない。

いずれにせよ、スキーには新しい属性が必要とされていることは間違いないわけで、地元の農家さんたちが運営するような変化出来ないスキー場はさらに淘汰されてしまうだろう。本当に企業努力・マーケティングが出来るスキー場しか生き残れない。まあ、どこの業界でも同じである。スキー業界はそれが少し早く起きているだけである。

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