コロナ対策として、安倍首相が一部の都道府県に限定して緊急事態宣言を実施したことにより、他県への移動が活性化されたと言われています。この安倍首相の決断は、多くの人から批判を浴びていますが、その問題の本質は何なのでしょうか?
今回の緊急事態宣言の内容を見る限り、私には「戦略的」な考え方が安倍首相もしくはその周辺に欠如していると考えています。戦略的な考え方とは何か?それは限定された資源を有効に活用することで目的を達成することであると、ここでは定義しておくことにします。つまり、限られたお金と法律的手段を「いつ」「どのように」「どこで」使うことで、コロナ感染を減滅するのか?ということです。
今回、安倍首相が実施している緊急事態宣言は、一部の地域への発令であり、しかも休業要請は2週間後から開始するというものでした。政府が言うには、様子を見ながら徐々に強めていくことで経済への影響を最低限にすることを狙ったものであると言っています。一見、正しいように見えるこの考え方を聞いて、日常的に戦略を考えている人は「やってしまった」と感じた人は多いのではないでしょうか?
というのも、戦略を学ぶ段階で非常に有名な話があるからです。戦略とはもともと戦争で相手に勝利するために発展した考え方であるため、戦略を学ぶ段階では必ず戦争において相手に勝利するためにどのように考えてきたのか?という歴史を学ぶ機会があります。その戦略の歴史において最もやってはいけない戦略として「徐々に戦力を追加していくこと(兵力の逐次投入)」が有名だからです。そして、この「徐々に戦力を追加していく(兵力の逐次投入)」という絶対にやってはいけない戦略を実行したのは、どの国でもない旧日本軍なのです。
旧日本軍は、太平洋戦争において、まさにこの兵力の逐次投入によって勝てる戦闘でも負けたと言われています。例えばある戦闘において、米軍の兵力が100で、日本軍が500において日本軍が500の兵力を投じて米軍を攻撃すれば100%に近い確率で勝利することが出来る状況においても、日本軍は50の兵力を徐々に投入していくようなことを実施したと言われています。(分かりやすく言っています)
この戦い方の何が悪いのかは既にお気付きでしょう。米軍の兵力が100にも関わらず、50の兵力しか投入しなければほぼ間違いなく負けます。しかし、日本軍は相手兵力の情報収集力の無さもあって、50ずつの兵力を逐次投入していったのです。結果として、その負けを繰り返し本来であれば勝てる戦いをも落としてしまったと言われています。これら情報は戦後に当時の米軍の兵力などを調査して分かったことなので当時の日本軍には正しいと思われていたのでしょうが、実際には勝てる戦いを落としていたのです。
このように、「兵力の逐次投入」というは多くの場合、負けを誘発する最もやってはいけない戦略として有名なのです。
今回のコロナの問題において、ある専門家は下記のような図を用いてコロナを減滅させるためには接触を8割削減する必要があると主張しています。この図を見ると分かるように、6割接触を削減したとしても感染者は横ばいで減ることはなく、7割接触を削減して初めて減少し始めるとされています。

つまりは、大きな力を発揮して行動抑制をしなければ減ることはないのです。少しずつ追加追加で施策を実施していても何の意味もないことを言い表しているのです。
今回、最も問題なのは、安倍首相はこの数値を事前に知っていながら、一部の地域のみの緊急事態宣言を発令したことです。しかも、その効果を見てから2週間後に休業要請をするというまさに兵力の逐次投入的な施策を実施しています。そして、先日になって全国への緊急事態宣言をするという「最もやってはいけないやり方をまさに実践している」のです。
上記の図は、50%の接触を削減しただけではコロナ感染者は増加し続けると言っているのですから、小さい効果しか見込めない施策を少しずつ実施していては永遠にコロナに負け続けると言っているのです。また上記の図は、一気に施策を兵力を極限までに投入すれば勝てると言っているのです。
にもかかわらず、安倍首相は少しずつ少しずつ兵力を投入するという愚策を実施しているのです。おそらくは、徐々に施策を強めることでコロナは減滅するでしょう。しかし、だからと言って喜んではいけないのだと私は思うのです。本来であれば、もっと短期間にコロナを減滅させることが出来たにも関わらずそれをしなかったことに対して国民はもっと怒らなければならないのです。
いずれせよ、今回の日本政府の実施する施策が旧日本軍の施策と似通っていることに私は興味を抱くと同時に、日本は昔と何も変わっていないのだと実感させられました。今後日本はどうなっていくのか?そして、私自身は何が出来るのか?そんなことをコロナの件で考えるようになりました。