今回は、マーケティングオートメーションの機能を使った施策の考え方の基本となる部分について書きたいと思います。実際の業務で実践しているものをかなり簡略化してご説明します。また、理解しやすいように架空のクライアントと架空の課題を設定して、どうMAを活用したのかについて書いています。実践的な内容となりますので、そのまま自社のマーケティングにも応用できるのではないかと期待しています。
クライアントA社:BtoB企業向けebook・ホワイトペーパーのメディアサイト運営事業
マーケティング課題:資料掲載数の増加
BtoB企業向け情報提供サービスが主事業であるA社は、BtoB企業向けのホワイトペーパーやeBookなどの資料をA社が運営するメディアサイトに有料で掲載してもらうことで売上を上げている企業です。しかし、A社のメディアサイトへの資料掲載件数はここ数年落ち込んでいました。
新規獲得のために実施している広告出稿の効果は年々下がる一方で今後もこの傾向は続くと考えており、経営陣は既存顧客(休眠顧客、登録のみ顧客含む)に対して再度資料を掲載してもらうことを狙ったマーケティングを実施したいと考えていました。
マーケティング担当者は、マーケティングオートメーションを活用して既存顧客の中から有望な見込顧客を抽出し、適切なコミュニケーションをとることで再掲載まで導きたいと考えるとともに、将来的に掲載してもらえる可能性のある顧客は誰なのか、そして掲載してもらうためにどのようなコミュニケーションを取る必要があるのかについて検討したいと考えていました。
そこで私たちから、下記のような施策を提案させて頂きました。
<資料掲載件数の減少を引き起こしている原因>
ヒアリングしていくと、A社の資料掲載件数の減少の主な原因は下記の2つにあることがわかってきました。
- そもそも資料掲載が効果的な施策だと思っていない
- 効果的な施策だとは思っているがどんな資料を作成すればよいかわからない
そして、既存顧客を様々な観点からセグメントした結果、下記のようにセグメントすることが最も有益だという結論にたどり着きました。既存顧客は、主に4つにセグメントに区分するのが最も効果的である。
- 「資料掲載が効果的だと思う」+「効果的な資料作成が出来る」
- 「資料掲載が効果的だと思う」+「効果的な資料作成が出来ない」
- 「資料掲載が効果的だとは思わない」+「効果的な資料作成が出来る」
- 「資料掲載が効果的だとは思わない」+「効果的な資料作成が出来ない」
図にすると下記のようにセグメントすることが出来ます。
既存顧客の中でも右上の象限に位置する顧客が最も掲載に近い顧客と考えられ、右下と左上の象限の顧客は「効果的な資料作成方法」か「資料掲載のメリット」を理解させ納得してもらえれば掲載に近づくと考えられる顧客です。そして、左下の象限の顧客は最も掲載に遠い顧客であり掲載までには、時間がかかる顧客と理解することが出来ます。
このようなセグメントが最も適切だと考えたのは、右上の象限と右下と左上の象限に多くの顧客が存在することがアンケートによって分かっていたからです。下記の図のように多くの顧客がこの3つの象限に位置しており、十分に効果が見込めることが明らかでした。逆に左下に多くの顧客が多いのであればこのセグメントは意味がありません。このセグメントに分けて施策を実施しても効果は限定的であり、効果が出るのは数年先ということになります。それは、今回のマーケティング課題を解決することにはなりませんので、もしそのような場合はこのセグメントは採用すべきではありません。
<意味のあるセグメントを考えるためのポイント>
セグメントは単に属性や閲覧履歴などのデータをもとに分ければいいわけではありません。セグメントする際には、下記ポイントに合致しているかを十分に検討する必要があります。
各セグメントへの施策が同じであれば、セグメントする意味がありません。もし、各象限で同じ施策が効果的なのであればMAを導入する意味がありません。無駄なライセンス費用が掛かるだけで安価に出来ることをあえて高価に実施することになってしまいます。
自社の能力、予算で十分に実施できるものでなければ意味のあるセグメントとは言えません。セグメントを切って施策の方向性はわかったけどコンテンツ作成に非常に大きなコストがかかったり制作に時間が必要な場合には現時点では良いセグメントとは言えません。自社に適したセグメントでなければ実施することは不可能です。出来ないことを考える時間は無駄でしかありません。
小さい効果しか見込めない施策を実施する意味はありません。ほとんどの顧客が左下の象限に位置するのであれば、効果が出るのはかなり時間がかかると考えられ費用対効果を考慮すれば実施する意味がない可能性があります。しかし、右上の象限と右下と左上の象限に多くの顧客が存在するのであればこのセグメントに区分する意味はあります。
多くの企業がセグメントを考えるときに、上記のポイントを見逃していて意味のあるセグメントが出来ていません。意味のないセグメントを設定してしまっては、どんなに施策を考えて努力しどんなにPDCAを回しても効果はいつまでも出ませんので注意です。
そして、各セグメントへ下記のような施策を実施することにしました。各セグメントに掲載してもらうために不足している要素を補うためのコンテンツを提供していく施策です。この施策は定期的に効果分析を行い、より良いコンテンツを掲載するようにPDCAを回すべき部分です。
ここまで説明すれば、マーケティングオートメーションを使っている人であれば、どうマーケティングオートメーションを活用しているのかがわかると思います。
まずアンケートで下記のようなアンケートを各顧客へMAから送信しました。(もちろん、フォームもMAのフォームで作成しています。)このアンケートによって、顧客をセグメントすることも目的の一つですが、Cookieを取得することも大きな目的の一つです。そして、アンケート結果によって各顧客を自動的に各リストに振り分け定期的にメルマガを送信したり、テレアポを実施したりしたわけです。
また、他にもコンテンツの閲覧状況、メール開封状況によって上のセグメントとして考えてよい顧客なのか、下のセグメントになってしまった顧客なのかを判断する基準を考案し、MAもその基準に沿って自動的に振り分けられるように設定しました。こうすることで、マーケティング担当者は最も重要なコンテンツ作成に時間をかけることが出来るようになったわけです。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
今回の記事はいかかでしたか?実際にやった業務はもっと複雑でいろんな制約条件があったのですが、この記事ではサラッと書いています。この仕事のポイントはやはり意味のあるセグメントを見つけることでした。何通りもの軸でセグメントを切ってどの軸で切ったセグメントが最も効果的で意味があるのかを何度も何度も考え直しました。その地道な作業なしにこの仕事は語れません。御社でも是非意味のあるセグメントとは何なのか?について考えてみてください。