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シャウエッセンの「レンジ解禁」施策は、消費者の視点を変えるマーケティング施策である。

シャウエッセンがこれまでレンジで調理することを禁止していたが「解禁」すると発表した。

色々と話題になっているが、私はこの施策はマーケティング的に素晴らしいと感じている。どういうことかというと、コモディティ化した市場において、シャウエッセンという製品に対する新しい視点を提供しているからだ。

ウィンナーを買う時に皆さんはどのような基準を使うだろうか?きっと多くの人は「価格」で決めるのではないだろうか?もちろん、味で決める人もいるだろうけど、大部分の人は味もそんなに変わらないし、安い方がいいなと思うのではないだろか?しかし、そのように判断されてしまってはシャウエッセンを含む食品メーカーはシェアを奪うことは出来ない。可能な限り自社ブランドを指名買いしてもらいたいのだ。

そのような状況において、この「レンジ解禁」の施策は、シャウエッセンの製品を指名買いしてみようと思わせる施策である。多少高くても買ってくれる可能性すらある。というのも、「レンジ解禁」というメッセージによって消費者に「製品こだわりを持っている=良い製品」というフィルター・思考枠を使ってシャウエッセン製品を見てもらえるようになるからだ。

この「レンジ解禁」のメッセージによって、消費者は次のような反応をしたのではないだろうか。

  1. レンジ解禁?どういうこと?
  2. レンジ調理を禁止していたなんて知らなかった!破裂してしまうから禁止してたんだね!
  3. いろいろ「こだわり」を持っていそう!=「こだわり」を持っているなら良い商品なんだろうな!

一般的に「こだわり」を持って製品を作ったり、仕事に取り組むことは良いことである。そして、多くの場合「こだわり」を持つことで良い結果・良い製品が生まれることを多くの日本人が価値観として共有している。もちろん、そうではない場合もあるが、基本的には「こだわり」があることは良い結果に結びつきやすいと考える。我々は、そのような「フィルター・思考枠」を共有し持っている。

この施策においては、その日本人の多くの人が共有する「フィルター・思考枠」で、シャウエッセンの商品を見てもらうことに成功しているのだ。

「価格は安い方が良いというフィルター・思考枠」でしかウィンナーを評価してくれなかった消費者が「こだわりを持っている=良い商品というフィルター・思考枠」でシャウエッセンを評価してくれるようになるのだ。結果として「どうせなら良い商品(シャウエッセン)を食べたい」という気持ちを高めることに成功している。消費者は、ウィンナーはどれも同じではなく、良い商品もあるんだということに気づかされたのだ。

また、この「解禁」という表現が素晴らしい。消費者からすれば、そもそも禁止されていたことなんて知らなかったのだが、いざ「解禁」と言われると欲しくなる。

マーケティングにおいて、異なる視点から商品サービスを見てもらうことで、新しい価値を知ってもらうことは非常に効果的な手法だ。売上増加に結びつく可能性が高い。例えば、「昔ながらの中華そば」の半生麺を「鍋用ラーメン」として発売して売上を増加させた事例などはまさにその典型である。(詳細記事はこちら)しかし、一方で異なる視点から自社商品サービスを見てもらう努力をしても成果に繋がらない場合もある。それはなぜなのだろうか?

それは、新しい視点を提供することだけでは十分条件ではないからだ。つまり、新しい視点から商品サービスを見たときに、消費者自ら「新しく価値」「今まで見えていなかった価値」「気づいていなかった価値」を想像出来なければ新しい視点を提供しようが意味がないのだ。

このシャウエッセンの施策は、消費者に「新しさ」や「気づいていなかった価値」をイメージさせる。「こだわりを持っている=良い商品」というフィルター・思考枠を通してシャウエッセンを見ることで、消費者はより良い未来をイメージできる。他のウィンナーよりも良いものを購入出来たと満足する自分自身をイメージすることが出来る。より良い未来を消費者自身の中で思い描けるのであれば、多少高くても買ってみようかなと思っても不思議ではない。

多くのマーケターが、自社製品サービスが最も魅力的に見える視点を探している。しかし、どのフィルター・思考枠で見てもらうのが最も良いのかの判断は、消費者自身がその商品を買うことで、より良い未来を描けるかどうか、想像できるかどうかという基準によって判断すべきである。

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