SalesforceやAccount Engagementの導入支援の仕事を日々行なっている人間としてよく直面するのがせっかく業務フローに適応させたシステムが作れて、クライアントの導入担当者は大喜びなのに現場の人たちが使わないという事態です。
システム自体は間違いなく業務効率化を実現すると思われ、これまでよりも良くなるイメージはあるものの、現場の社員は新しいシステムを使うことのハードルが高く良さは理解していても今の業務の流れを変えたくない気持ちが勝ってしまい使わないのです。
このような事態に直面した際、我々のような導入支援をする企業として出来ることは非常に限られます。(一部のアクセンチュアとか社内に常駐して部門間調整やキーマンへの説明・説得まで行う企業は除きますが)特に近年はリモートでプロジェクトの開始から終了までZoomでしか顔を合わせないようなやり方だと特にその傾向は強くなります。
対面であれば、もっと伝わっているはずのことが伝わらず、これまでの説明よりもさらに丁寧に話す必要があったり資料も細かくしなければならないなど逆に仕事が増えている部分もあるのではないでしょうか。しかし、それでもお客様側からすると画面を見ながら操作するものの翌日には何も残っていないような状態になってしまいSalesforceを習得できない状態が続くことがよくあります。
このような状態に陥ってしまう一つの原因は、Zoomなどのリモートだとクライアント社内の細かいルールや暗黙知や雰囲気を掴み取りにくことにあると私は考えています。業務フローは詳細に知っていてもその業務を実際に行う人たちの気持ちや感情を感じ取ることが出来ず、知らずに理解を妨げていたり、場合によっては不愉快な思いをさせてしまっているのです。
この状態からSalesforceを使いこなす集団に変貌させる方法は、個人的には一つしかないと思っています。それはクライアント社内に強力な推進役を作り出すことです。言い方を変えると、推進役がいるクライアント企業はほぼ確実にSalesforceが社内に浸透していきます。一方で、推進役がおらず教育も全てベンダーにお任せというスタンスの企業は、ほぼ間違いなくSalesforceが浸透していきません。
考えてみれば当然なのですが、我々ベンダーが画面上だけでやれることなんて非常に少ないのです。特に「Salesforceを使うモチベーションを高める」などの依頼はやり方によっては可能かもしれませんが、会ったことのない人間のモチベーションを高めることは非常にハードルが高いのです。特に我々は社員のモチベーションを高めるスキルという部分においては非常に弱い部分があります。どうしても技術や設定などにスキルが限られる集団です。そんなベンダーに社員をやる気にさせることは本当に難しいのです。
成功するプロジェクトというのは、社内の推進役の人が営業に対して一人一人丁寧に説明・レクチャーを粘り強く続けていくものです。営業社員からしても見知らぬ人から教えてもらえるのは基本的な部分のみになり、その会社の独自の使い方・考え方まで考慮した上で教えてもらえないと感じてしまいます。しかし、社内の人間であれば営業の気持ちを汲み取った上で、背景を踏まえた上で上手に説明・説得が出来るのです。こうするとSalesforceを使うモチベーションが高まり使うメリットをきちんと感じてもらえるようになるのです。
ここからはベンダーとしてのやり方の話になりますが、上記のような推進役が社内にいないケースがほとんどだと思います。そのような場合、どうしているのか?ですが、我々が出来ることは推進役を作り出すことだと思います。まずは1人の人間をSalesforceのファンになってもらい、その人がその素晴らしさを他の社員にも伝えたいと思えるくらいにSalesforceを好きになってもらうことだと考えています。その上で、各営業部への説明をお願いし、可能な限りのサポートをしていくという形が最も良いのではないかと思うのです。
もちろん、これはそう簡単なことではありません。しかし、我々がいくらリモートで頑張っても出来ない部分があることを認識し、足りない部分を誰かに補ってもらわなければ我々ベンダーの評価にもつながることを考えれば、技術や知識だけではなく人を巻き込む力もつけていかないといけないということに気づくのではないでしょうか。