顧客セグメントをどう切るかによってマーケティングの成果に大きく影響する。
顧客セグメントが下手だとどんなに施策の企画に時間とコストをかけても効果的な施策にならないのは当然です。区別したグループに様々な価値観の人が混在してしまうためにそのグループのほんの一部の人にしか刺さらないからです。逆に顧客セグメントが上手だと効果的な施策になるのも当然です。区別したグループには、ある同じ特徴を持った人たちがいるわけですから、あとはその特徴を持った人たちに刺さる施策を考えればいいからです。もちろん、そう簡単に刺さる施策を考えつくわけではありませんが、しかし、正しい顧客セグメントが出来ていない状態では、どんなに施策に力を入れても無駄になってしまいます。
サイトへのアクセス総数で顧客セグメントしても意味はない。
例えば、購入に近い人を抽出してプッシュメールを送信したいとします。その場合、「自社サイトへのアクセスが多い人ほど購入の可能性が多い」という区別の仕方は正しいでしょうか?そんなことはありません。数日前に検討を終了している人かもしれませんし、調べものをしていて多くのページを閲覧していただけかもしれません。最も購入に近い人を抽出する必要があるのであればサイトへのアクセス総数だけでセグメントしても決して購入に近い人というわけではありません。とはいえ、完璧にセグメントすることは難しい。だから、少しでも購入に近い人を抽出するために工夫する必要があります。
サイトアクセスをRFMの3つの指標を参考にして顧客セグメントをする。
自社製品サービスに毎月100万円を使ってくれている顧客と毎月5万円使ってくれる顧客を同じ待遇にすることはあり得ません。100万円使ってくれる顧客にはより割引サービスやその他付加サービスを付けて継続して100万円使ってくれるようにするのが賢いやり方です。RFMは、リセンシー(直近購買日)フリークエンシー(購買頻度)マネタリー(購買金額)の3つの指標を使って自社にとって収益性の高い顧客とそうではない顧客を区別して効率的な施策をしようとする試みです。
本来このRFMは、既存顧客を区分するために利用される考え方ですが、私はこの考え方をサイトアクセスする見込顧客を区分するためにも利用できると考えています。つまり、『直近アクセス日・アクセス頻度・アクセス総数』の3つの指標を使ってサイトアクセスする見込顧客を区分することで購入に近い人とそうでない人を区別することが出来るのです。
MA(Hubspot)による顧客セグメント方法
このRFMは基本的にこの3つの指標を顧客毎に捕捉していなければなりません。そのため、どんな企業でもすぐに出来るものではありません。しかし、MAを導入している企業であれば、それは可能です。殆どのMAはメールアドレスをキーにしてそのレコードに対し自由にフィールドを追加することが出来ますし、オートメーションルールやワークフローなどの機能によって顧客がアクセスした日時などを記録しその顧客のフィールドに記入することが可能だからです。
ここでは、MA(Hubspot)を使ってどうRFMの考え方に沿って顧客セグメントするかについてそのステップを記載したいと思います。他のMAを利用している場合でも基本的なことは同じなので参考にして実際にトライして頂ければと思います。
(0)3つ指標を入れるコンタクトプロパティ(フィールド)を事前に作成
(1)アクセスする度に日付を捕捉するワークフローを作成(直近アクセス日)
(1-2)記入された日付を下記のように5等分して、①~⑤のいずれかの数字をコンタクトプロパティに記入するワークフローを作成
⑤=直近3日以内にアクセス有
④=1週間以内にアクセス有
③=2週間以内にアクセス有
②=4週間以内にアクセス有
①=1ヵ月以内にアクセス無
【注意】3日以内や1週間以内という区切りは一例にすぎません。自社のアクセス者の状況によって変える必要があります。
(2)アクセス頻度を捕捉するワークフローを作成(アクセス頻度)
(2-2) 記入された頻度を下記のように5等分して、①~⑤のいずれかの数字をコンタクトプロパティに記入するワークフローを作成
⑤=1ヶ月間に30回以上
④=1ヶ月間に20回以上30回未満
③=1ヵ月間に10回以上20回未満
②=1ヶ月間に5回以上10回未満
①=1ヶ月間に5回未満
【注意1】1ヶ月間に30回以上のアクセスという数字は一例です。企業や製品サービスによって適した期間と数字は異なります。
【注意2】Hubspotでは、ある期間内に〇〇回以上のアクセスという設定は複数のワークフローを組み合わせなければ実現できません。
もし、どうしても分からないということであればお問い合わせください。
(3)アクセス総数を捕捉するワークフロー作成(アクセス総数)
(3-2)記入された数字を下記のように5等分して、①~⑤のいずれかの数字をコンタクトプロパティに記入するワークフローを作成
⑤=合計200アクセス以上
④= 合計100アクセス以上200未満
③= 合計50アクセス以上100未満
②= 合計25アクセス以上50未満
①= 合計25アクセス未満
【注意】このアクセス数は一例です。企業や製品サービスによって適したアクセス数を設定します。
上記の設定が完了すると下記のような表が完成するイメージです。
結果として、111~555までの125通りのセグメントが完成します。555の人は、直近3日以内にアクセスがあり、1ヶ月間に30回以上の頻度でアクセスし、アクセス総数も200以上ある人ということになり、購入に最も近い人と考えられる人になります。また、111の人はその逆で1ヵ月以上アクセスがなく、1ヶ月間に5回未満しかアクセスがなく、合計アクセス数も25以下という購入には遠い人と考えられる人です。
アプローチセグメントの決定と施策案の検討
当然ですが555の人と111の人の扱いは同じではありません。555の人には購入直前もしくは非常に興味を持っている人と考えられるので、オファーを提示したり、電話でアプローチしても良いかもしれません。しかし、111の人はそもそもメールを送信する必要さえないかもしれません。また、各セグメントへの施策案を検討しなければならないことを考えると111などの見込の低い人への施策案を考える時間を削って見込の高い人への施策案を考える時間に充てた方が効率的に時間を使うことになるのではないでしょうか。メールで送るだけなら無料だから送るだけ送っておこうという考え方もありますが、興味のないことに何度もメール送信されることでどのような反応が伝播するのかについても十分に検討した上で決定すべきだと思います。
結果測定を実施し、なぜその結果になったかを検討する。
このようにセグメントすると効果測定も容易になり、顧客理解が進むようになります。125あるセグメントに対して件名とコンテンツが異なるメールを送信した場合、各セグメント毎の開封率・クリック率・CVRが見えるようになるからです。実際に施策を実行してどのセグメントが最も反応が良かったのかが見えます。555の人が最も反応が良いはずですが、必ずしもそうなるわけではないのが面白いところなのです。そして、そこに顧客理解を深めるためのヒントがあります。555のセグメントよりも443のセグメントの方が反応が良かったという結果が出た場合、なぜそのような結果になったのかを考えることで顧客理解が深まっていくのです。この繰り返しが非常に大切なのは言うまでもありません。
自社だけのセグメントを見つけよう。
サイトアクセスによる顧客セグメントはほんの一例です。自社にあった顧客セグメントの軸が必ずあるはずです。それを見つけるためにも一度この方法を試して頂き、顧客の反応を見て顧客理解を深めることで効果的な顧客セグメントを見つけてほしいと思います。