「QRコード決済」シェア争いのマーケティングコミュニケーションの方向性について

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PayPayなどのQRコード決済は、どの企業がシェアを獲得するのだろうか?今回は利用店舗数や手数料などQRコード決済のシェアに影響する要因の中でも、マーケティングコミュニケーションに絞って考えてみたい。

各社は、マーケティングコミュニケーションをどのような考え方で捉えるべきなのか?私自身の理解のために記載している(このブログの記事全てがそうだが)。特に具体的な提案等があるわけではないので、気軽に読んでもらえれば幸いである。

それにしてもなぜマーケティングコミュニケーションなのか?であるが、QRコード決済においてマーケティングコミュニケーションが上手くいけば、たとえ手数料や利用店舗可能数が劣っていても(大きな差がなければ)非接触型の方が多少便利でも挽回できる可能性があるという点において重要であると考えているからだ。

また、QRコード決済という新しい支払い方法をどのように評価すべきか利用者自身が適切な基準を持っていない段階だからこそ、マーケティングコミュニケーションが大きな成果につながりやすいとも言える。これは後程記述する。

今回は、人間がどのように新しいサービスや商品を理解し選択するのかについて、脳の仕組みに則って考えてみたいと思う。
早速ではあるが基本的に人間は4つのステップを踏むことで、商品を知覚し購入するかを決める傾向にあると言われている。

(ステップ1)違いを見つける
1つ目は、違いを見つけることだ。人間は新しいものを知覚する。逆にこれまでと同じものに対しては特別な反応はせず無視する。帰宅した部屋に変化があるとそこに注意が向くが、何も変化していなければ何に対しても注意は向けないのと同じだ。これまでと同じでは顧客は無視してしまう。QRコード決済は全く違う決済方法のためすぐに利用者は違いを見つけることが出来ている。

(ステップ2)因果関係を探す
次に人間は、新しさや違いを見つけたらそれがなぜ起きたのかを理解しようとする。部屋の窓が割れていたら床にボールが落ちているのではないか?など、この現象が起きたルールもしくは理論を即座に構築しようとするのだ。QRコード決済は、国の推進によって引き起こされている部分もあるが、他にも世界的な流れがキャッシュレスに進みつつあることを多くの人が感じている。

(ステップ3)予測する
次に人間は、予測する。なぜこの現象が起きたのか理解した上で、その結果自分自身の未来にはどのようなことが起きるのかを予測するのだ。私たちは予測できないことを非常に嫌う。人間は予測できることを好み、将来どうなるか分からないものに対してストレスを感じる。そのため、企業は商品サービスによって利用者にどんなことが起きるのかイメージさせなければならない。どうなるか分からない商品サービスはストレスでしかない。また、人間は「楽しい未来」「より良くなる未来」を好む(当然だが)。PayPayは「20%還元・一定確率で半額」というキャンペーンによってPayPayを利用することでお得な未来を人々に予測させた。

(ステップ4)認知的不協和
人間は新しい商品サービスを受け入れるに当たって、自分自身の選択が正しいことを積極的に説明しようとする。新しいサービスの欠点を知っても無視して、自分自身が納得できるメリットの正当性を証明しようとする。以前からQRコード決済にはセキュリティ的な不安があることは知られていたし、そのような記事を見た人は多かった。しかし、それでも「20%還元・一定確率で半額」を利用しようとする人であふれかえった。

今回のQRコード決済のコミュニケーションの争いにおいて、最も重要なのはステップ3の「予測する」という部分であろう。つまり、利用者に「楽しい未来」「より良い未来」を予測できるようにしてやれば、あとは自分にとって最も良いQR決済であると考えるようになるからだ。一度、その状態になれば利用者は自らその認識を強化し始める。このステップ4に到達した利用者は、別のQRコード決済に変えることを嫌う。自分自身の選択が間違っていたことを認めることになりかねないからだ。つまり、ステップ3で最も良い未来を予測させることが出来るかどうかが大きな分かれ道となる。

現状を見るとどうだろうか?現時点ではPayPayがコミュニケーション的には1番良い未来を描けているような気がする。というのも1番最初に大規模なキャンペーンを実施したからだ。1番最初に知覚される商品サービスは多くの場合、優位に立つことが出来る。上記にも記載したように、一度知覚され、ポジティブな印象を持った場合、その認識を排除することは人間にとってあまり好ましいものではない。また、最初に大規模キャンペーンを実施したことで、本来であればもっとニュースになっても良いようなLINE Payの20%還元キャンペーンがかすんでしまった。LINE Payや楽天Pay・メルペイを利用することでどんな「楽しい未来」「より良い未来」があるのかがPayPayよりも印象は薄いのではないだろうか。また、後発企業はどうしてもトップ企業を追っているというネガティブなイメージも付きまとってしまう。きっとLINE Payが最初に20%還元キャンペーンをやっていたらもう少し印象は違ったはずだ。

とはいえ、以前の記事に書いたようにPayPayを一定のレベルで認知させスマホにダウンロードさせることに成功したものの、PayPayを定期利用させるまでには至っていないと考えられる。まだまだ、その他企業にも十分にチャンスがある状態だと考えるのが妥当だろう。

では、どのような考え方をもって各企業は「楽しい未来」「より良い未来」を利用者に印象づければいいのだろうか?
このようなとき重要なのは、利用者に対してどのような「考え方・フィルター」を想起させるかを考えることである。何度かこのブログでも言っているように、人間は商品サービスを評価するときに特定の考え方やフィルターを通して評価する。言い換えれば、必ず何らかの色メガネをかけて商品サービスを評価するのである。

そして、企業はどの色メガネで見てもらいたいのかをある程度コントロールすることが出来る。特にこのQRコード決済という利用者にとって新しいサービスは、どのような色メガネを使うべきなのか理解できていない状態である。自社の努力次第で自社サービスが他社よりも良く見える色メガネを利用者に使わせることが出来るチャンスということだ。これは既に普及した商品サービスでは絶対に出来ないことだ。既に普及した商品サービスの利用者には評価する基準が明確に存在し、企業はその基準から逃げることは出来ず基準に振り回される。しかし、新しいサービスは利用者に対して、どう評価すべきか(どの色メガネを使うべきか)を促す余地が十分にある。

現状各社とも、比較的自社サービスとの連携が出来ることをメリット(より良い未来)としてコミュニケーションをしているように映る(実際はそうではないかもしれないが)。しかし、自社サービスとの連携の良さだけではシェアは増えていかないことは恐らく各社とも認識しているはずだ。

例えばメルペイは、メルカリを利用する人に対しては比較的「より良い未来」を提供しやすい。しかし、逆にメルカリでポイント利用できるという特徴は、メルカリを使おうとは思わないその他大勢にとっては魅力的に映らない。この機会にメルカリを利用する人が増えることは増えるだろうが、フリマアプリを誰もが持ちたいのかと言えばそうではない。メルカリでも利用できるという特徴は自ら利用者数の天井を決めてしまうようなものだ。メルペイとしては、メルカリから離れたコミュニケーションをする努力しなければ利用者数が早期に頭打ちになるだろう。楽天ペイも同じだろう。楽天圏で生活する人にとっては魅力的に映るが楽天から距離のある人からすればその逆である。どの企業も特定の人だけに「楽しい未来」「より良い未来」が見えるコミュニケーションは避けたいところだろう。

各企業は既存サービスとの連携の良さ以外においてマーケティングコミュニケーションを展開する必要があるだろう。

今後、各社がどのようなコミュニケーションを展開して、どのようにシェアを獲得するのか?観察していきたい。