4割近くの人が QRコード決済はキャンペーン時にしか使わないと結果が出た。当然と言えば、当然である。特にQRコードを使う明確なメリットを提示しないで、割引キャンペーンをすれば、「QRコード=割引」という確固たるイメージが頭の中に出来上がってしまう。マーケティングが、顧客の知覚を奪い合う競争だとすれば、このような知覚を顧客がしてしまうことは企業にとって本当に望ましいことなのだろうか。
本来のQRコード決済企業の狙いは、顧客の購買情報を取得し導入企業に提供することであったはずだ。しかし、そもそもの利用者が少なければその最初の思惑は崩れてしまう。仮に、今の利用者数でも十分だとしても、キャンペーン時にしか利用しない人のデータしか取れなくなるということでもある。QRコード決済以外にもキャンペーン時にしか購入しないという人は一定数いるわけだが、このままではこのような割引に敏感に反応する人のデータばかりが集まり、データの質としては決して良いものとは言えないものになってしまうだろう。
企業がマーケティングにおいてQRコードのデータに期待するのは、定期利用者がどんな人であるとか、ロイヤリティを高めやすい人は誰なのか?といった知見を得ることである。割引にしか反応しない人については、別にQRコードでデータを集めるまでもなく、自社でもできることである。企業としては、メリットが少ないと感じてしまう。インフラとしての支払い手段として期待したものの、現在は全くそのようにはなっていないし、より良くなる感じもしないのが正直なところだ。
以前、このブログでは人間が新しいサービスをどのように理解するのかについて、脳の仕組みに沿って書いたことがある。その記事では主に4つのステップを踏む必要があると説明した。つまり、
- 違いを見つける
- 因果関係を探す
- 予測する
- 認知的不協和
の4つのステップである。このステップに現在のQRコード決済サービスを当てはめてみると、ステップ2の「因果関係を探す」までは多くの人に認識されていると言える。しかし、QRコード決済によって、より良い未来を予測できるようにはなっていないし、現在の生活に自然とQRコード決済が取り込まれるようなストーリーも多くの人は持っていない。ほとんどの人は、ステップ2でストップしてしまっているのだ。
「QRコード決済」シェア争いのマーケティングコミュニケーションの方向性について
このような現状を打破するためにどうすれば良いのか?についてもこのブログでは述べている。要約すれば、QRコード決済利用者のデータを使ってより良い購買体験を提供できるかどうかがさらに普及するかどうかの重要なポイントであるということだ。上記に述べたように、導入企業には購買データが溜まるようになり、そのデータを使ってパーソナライズされたキャンペーンなどを展開することが出来る。しかし、そのようなデータをキャンペーンに使っているだけでは、これまでと何ら変わりがなく、そのうちに顧客からはうんざりされるだけだ。だから、従来のようにデータを使うのではなく、データを顧客のために使うべきだという内容であった。
しかし、現状はまだまだそのような状態にはなっていない。データは導入企業が自由に扱えるものであり、そのデータをどう使おうが導入企業の勝手である。しかし、このままではこれらデータは顧客をウンザリさせるプッシュ通知に使われるだけだ。そうなれば、QRコード決済を利用する理由がさらになくなるだろう。
マーケティング担当者として、QRコード決済という新しいサービスは非常に研究のし甲斐のあるサービスである。今後も打開策がないか勝手に考えていきたいと思う。