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なぜMA・CRM導入・運用が「生産性の低い仕事」になるのか?生産性の高いマーケティング担当者になるために。

「カナズチを持つと何でも釘に見える」という。面白そうなおもちゃを手にすると何でも試したくなることを表現した言葉であるが、これは、我々マーケターがツールを手にすると何でもいいから使ってみたくなり、本質的な問題を見失うことへの警告でもある。

正直なところ、MAやCRMのツールを使ってみたいという、その気持ちはよく分かる。単純に好奇心が強くなり、成果とかそういうことを抜きにして「面白そう」と感じてしまうのだ。しかし、そのような考え方が通用するのは趣味の範囲までだ。仕事において「なんかやってみたい、なんか成果が出せそうだ」でツールを導入することは、コストがない場合を除き許されることではない。

私たちは仕事において一定期間内に何らかの価値のある結果やアウトプットを出さなければならない。例えば、何の変化も生まないことに多くの時間と労力をかけることはあまりにも馬鹿げているし、そのようなことをやっていては、今は良くてもいずれ仕事ができない人として判断されてしまうだろう。

私たちは、どんなアウトプットを出すことが、自社に必要があるのか?ということを明確にした上で、どんな手段が必要なのか?そのためには、どんなツールが必要なのか?について明確にしなければならない。本来であれば、そのように仕事をするのは当然のことである。

しかし。多くのマーケターは、そのような環境にいるにも関わらず、出すべきアウトプットを明確にイメージしないでいきなりツール選びをしてしまう傾向にある。ツールベンダーに危機感を煽られ、競合他社から遅れまいということで導入を決定してしまう。また、上司や役員からトップダウンで導入せざるを得ない場合もあるだろう。しかし、最大の問題は、ツール導入時に「本当に解決すべき問題」と切り離して検討してしまうことだ。

例えば、既存顧客からの売上を向上させるために、CRMを導入したという場合、一見正しく判断しているように見える。しかし、この企業で今最も問題になっているのは、継続利用率の低さであり、その本質的な原因は製品自体の使いにくさである場合、CRMの導入はどんなに努力しても効果を上げることはない。製品に競争力がない中でCRMによって顧客最適化を実施したところで大きな変化が起きないことは誰にでも分かることだ。

しかし、ベンダーからは、今導入しなければ更なる問題が引き起こされるとか、データ活用に乗り遅れると取り返しがつかないとか、CRMによって効果が出ている企業が沢山あるとして、本質的な問題と切り離された部分で議論される。導入を決める担当者としては、すぐには製品の改良ができない以上別の方法で離反を防がなければならないという考えもあり、淡い期待を抱いて導入を決定してしまう。しかし、その判断は、安宅氏の「イシューからはじめよ」でいうところの「犬の道」である。つまり、どんなに頑張っても小さな成果しか得ることのできない道である。結果として、ツール導入の投資金額に見合うような成果を出せない企業が80%以上にも及ぶという調査結果が出てくるのだ。

では、どのように考えればツール導入に失敗しないのだろうか?まず最も大切なことは、「問題を見極める」ことに限る。本当に解決すべき問題とは何なのか?を考えずに行動することほど、意味のないことはない。問題の根源を見つける努力こそが、無駄な意味のない仕事をなくすことにつながり、無駄なツール導入を防ぐことができるようになる。結果として、出すべきアウトプットを効率的に出すことができるようになるのだ。

殆どの企業が、MAやCRMを導入してから「どう活用すれば良いのか?」という相談をしてしまう。しかし、そのような相談をしてしまうこと自体に問題がある。どう活用するのかを導入してから考えることは、それまで何も考えていなかったと堂々と宣言しているのであり、本来であれば恥ずかしいことであることを認識すべきだろう。そして、効果が出るか分からないことに今後多くのコストを投じていかなければならないことは、非常に非効率であり、生産性が低い仕事に取り組んでいることを認識すべきだ。

何度も言うように、私たちマーケターの仕事は価値のあるアウトプットを出すことにある。頑張っていれば評価される時代ではない。だからこそ、最も解決すべき問題に取り組むべきだし、本質的な問題は何なのかを最初に検討しなければならない。そうしなければ、どんなに長時間努力しても小さな成果しか達成できない仕事に取り組み続けることなる。そのような判断をする人材は、今後必要とされなくなることを強く認識すべきだ。これからの時代に生き残れるマーケターになりたいのであれば、この生産性の高さを強く意識しなければならない。

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