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パーソナライズの効果と限界。マーケティング担当者が考えるべきこと。

データを活用したマーケティングということで、Webサイト上でコンテンツをパーソナライズする企業が増えてきている。過去の閲覧データからパーソナライズしたり、DMPと連携することで他サイトの閲覧履歴データをもとにパーソナライズできるようになった。

しかし、このようなWebサイト上でのパーソナライズは一般的には効果があると言われているが、もちろん効果が期待できる企業と効果が期待できない企業がある。企業担当者は、競合他社の動向やデジタルの流行に乗り遅れまいとして導入を検討することが多いが、まずは冷静に自社にとってパーソナライズがそもそも有効なのかを検討すべきである。

Webサイトのパーソナライズの目的としては、基本的に見込顧客をナーチャリングして自社製品サービスの購入を促すことや、顧客と企業との距離を縮めることを目的とする場合が多い。ECサイトであれば、顧客が好みそうな商品を提示したり、BtoB商材であればブログ記事によって自社製品のメリットを理解してもらうことが目的となる。さらに、顧客が欲しいと思っていた商品サービスや情報を探索する手間なく提示することで、かゆいところに手が届く的にストレスのない情報提供を実現することも可能だ。

これまで全ての顧客に同じ情報を届けるしかなかった時代から考えれば素晴らしい進歩である。我先にとパーソナライズをやりたいという企業が出てくるのは当然ともいえる。パーソナライズによって事業を拡大できるかもしれないと感じるものだ。

しかし、パーソナライズ機能を活用したからといって、どんな企業も事業を拡大できるわけではない。パーソナライズ機能が効果を発揮できる環境というものがあると私は考えている。パーソナライズが効果を発揮する環境は「商品サービス選択難易度」が高い場合である。つまり、大量の商品があって顧客がその中から自分に合った商品を選べない場合や保険など商品サービス自体が複雑で購入すべきかどうか簡単には決められない場合だ。これまでであれば、適切な商品や商品の組み合わせは顧客自身が検索するなどして選ばなければならなかったし、参考になる記事も顧客自身で探して勉強しなければならなかった。パーソナライズはそのような手間やストレスを軽減する可能性がある。このような環境下においてパーソナライズがあることで顧客に価値を提供することができるのだ。

逆に言えば、「商品サービス選択難易度」が低い場合には、パーソナライズは効果を発揮しないということでもある。商品数が少なくコンテンツも少ない状態では、パーソナライズする意味はないということだ。

また、パーソナライズを導入する環境ではないが、条件と言えるものもある。それは十分な「コストパフォーマンス」を発揮できるかという点である。ECサイトの場合で言えばECサイトに訪れるユーザー数が十分に多くなければならない。パーソナライズしたからといって購入率が十数パーセント増加するなんてことはない。多くて数パーセントである。つまり、そもそもパーソナライズする人数が少なければ、パーソナライズのコストを回収することは出来ない。また、BtoB企業のように1件当たりの利益が十分に高ければパーソナライズ機能を導入したコストを回収することも可能な場合はあるだろう。いずれにせよ、コストを回収できるだけの売上・利益の増加が確保できる条件をクリアしているかは非常に大切だ。

上述したように、パーソナライズ機能の効果(購入率の増加)はどんなに良くても数パーセント程度だ。ほとんどは、1パーセントにもならない。その理由は当然であるがパーソナライズ機能は顧客からすれば商品選択の重要な要素ではないからだ。パーソナライズ機能はあくまで商品選択の補助であってメインではない。どんなに適切な商品を適切なタイミングでパーソナライズ出来たとしても競合他社の製品サービスの方が良ければ競合他社の製品サービスを選択するのだ。もちろん、スピーディーに手間なく見つけられることは顧客にとってありがたいことだが、だからといって競合他社よりも劣る商品サービスを選ぶことはない。パーソナライズにコストを投下するよりも、製品開発にコストを投下するなど、他にも効果が期待できることは沢山あることも頭に入れておくべきである。本当にパーソナライズすることが必要なのか?という問いに納得出来る説明が出来なければならない。

さらに、パーソナライズの課題は、サイト上で提示する内容が固定されてしまうことだ。パーソナライズ機能のリリース当初は効果を発揮するものの、時間が経過すればするほど効果は薄くなる傾向にある。顧客からすれば時間が経つといつも同じような情報等が表示されるため、目新しさを実感出来なくなる。

顧客は短期間に変化するものではない。なのでDMPの情報をもとにパーソナライズしても固定してしまう。また、閲覧履歴からパーソナライズしても固定化してしまう。関連する情報を提供しても、ただ単に目新しさを顧客に提供しただけで、本来の期待する増加率には達しない可能性が高い。関連するコンテンツを作成していけば何とかなるが、多くの種類のコンテンツを作成し続けるのはとんでもない手間とコストが必要になる。そこまで考えておくべきだ。

この課題は既存顧客を対象にパーソナライズする場合も当てはまる。いつも同じような情報を提供していても時間経過とともに効果は減っていくのだ。

Web上でのパーソナライズは導入して終わりなのではない。どのような切り口でパーソナライズするのか?そして、その効果は持続可能なのか?もしくは、持続可能な手段があるのか?という視点でも導入前に検討すべきなのだ。例えば、家具のECサイトで椅子に興味を持った人がいつまでも椅子に興味があるわけじゃない。椅子に興味を持った人は次にどんな家具に興味を持つ傾向があるのか?などパーソナライズの効果を維持するために、時間軸でも顧客分析をしておく必要がある。

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