デジタルマーケティングの最大の特徴とは何だろうか?おそらく多くの人がパーソナライズと答えるのではないかと思う。アナログな技術では決して実現できなかったone to oneなコミニケーションがデジタルになったことで可能になったのだ。
今や多くの企業がパーソナライズを実現しようと努力している。MA (マーケティングオートメーション)を導入してメールやプッシュ通知をパーソナライズしようとしている。しかし、そのような試みをすればするほど、豊富なデータとデータの整備が必要であることに気づきDMPを導入するようになる。これで顧客一人ひとりに最適なコンテンツを提供することができるようになったと誰もが思う。
しかし、実際はどうだろうか? MAやDMP等データ活用するための環境整備が整った企業が多くなった今でもパーソナライズによって事業にインパクトを与えることに成功した企業は私を知らない。これはデジタルマーケティングに関わる人間として危機感を抱かざるを得ない。
というのも、これらマーケティングツールは非常に高価であり、その投資に見合った成果を出すことがマーケティング担当者には求められるからだ。しかし、ほとんどのマーケティング担当者が成果を出せていない状況は、マーケティング担当者の立場を危うくしかねない。
なぜ、こんなにもパーソナライズはうまくいかないのだろうか?私はその原因の1つは、「継続的な」コンテンツ制作ができない企業が多いことだと考えている。パーソナライズとは、顧客のステージやセグメントによって次のステップに進んでもらうためのコンテンツを提供することである。そのため、コンテンツがなければパーソナライズは不可能である。
しかし、ほとんどの企業においてコンテンツが不足している。検討当初は、自社コンテンツの数が豊富にあることを確認して十分にパーソナライズするための準備が整っていると考えてしまうのだがコンテンツなら何でも良いわけではないことにすぐに気づく。
例えば、自社に10,000ものコンテンツがある企業があるとする。しかし、そのコンテンツの内訳は、新規顧客を獲得するためのコンテンツが9割以上占めるような場合、思うようなパーソナライズができない。というのも、上記に述べたように顧客を次のステップに進めるためには、新規顧客獲得のためのコンテンツでは効果を期待できないからだ。一見コンテンツが多そうに見えても使えるコンテンツは少ない企業が多いのだ。
では、使えるコンテンツを増やせば良いのか!と思うかもしれないがそんなこともない。デジタルマーケティングを実践している人であれば理解できるかもしれないがコンテンツは何度でも使えるわけじゃない。一定期間後おけば使えるものもあるが、多くのコンテンツは1回限りの運命であることが多いのだ。
その理由の1つは顧客は1つのコンテンツを見たからといって気持ちや行動がすぐに変わるわけではないからだ。例えば、あなたの会社の製品を購入する顧客は主に4つのステップ(認知→検討→比較→購買)を踏むとする。そして、顧客が比較のステップにいることがわかり他社比較のコンテンツを提供したとする。しかし、その1つのコンテンツで気持ちと行動が変化する人は驚くほど少ない。それは感覚的にもお分かりいただけるのではないだろうか?
結果として、ほとんどの人は比較フェーズから動かないままになり、次のステップに進んでもらうための他のコンテンツが必要になるのだ。何度も同じコンテンツを提供するわけにもいかないわけだから、新しいコンテンツを継続的に制作することが必要になるのだ。
しかし、このような継続的にコンテンツを制作することができる企業は意外なほど少ない。というのも、ほとんどの企業がツールのライセンス料や運用人材のコストしか考えていないからで、実際に運用が始まってみてコンテンツの重要性に初めて気づくからだ。結果として、コンテンツ制作の予算を獲得できず、テクノロジーでやれる事はほんの少しと言う典型的なマーケティングテクノロジーを活用しきれないという状況に陥るのである。
パーソナライズをすることできっと成果を出すことができるだろう。しかし、ほとんどの企業は成果を出すためにテクノロジー的な側面ばかり意識が向いてしまっている。パーソナライズはテクノロジによって実現できるが、テクノロジーさえあれば良いというわけではないのである。
そのことを十分に認識した上で、パーソナライズに取り組んでもらいたいものだ。