マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

オフィスグリコの成功要因は、マーケティング担当者として参考になる。

オフィスグリコを導入している企業数は11万を超え、ボックス数も13万以上になっている。(2016年時点)売上高は53億円にも達している。マーケティング担当者であれば、なぜこのような発想が出来たのか?ということが気になるのではないだろうか?

アンゾフの成長マトリクスで言えば、既存市場に既存製品を売っていく戦略である。多くの企業が新市場を開拓したり、新製品を導入することで売上を伸ばしている中で、オフィスグリコの戦略は注目に値する。

また、多くのマーケティング担当者にとって新市場の開拓や新製品の開発は非常にハードルが高い。実現するためには社内のいくつもの困難を乗り越えなければならない一方で、既存市場に既存製品を売ることはマーケティング担当者であっても比較的容易に出来る。そのため、まずは既存市場に既存製品を売っていこうと考える人が多い。しかし、それは多くの人が挑戦して失敗してきた道を進むことであり、最も難しい選択になる可能性が高い道でもある。

なぜオフィスグリコは成功したのか?それは「新しいお菓子を食べるシーンを開発した」ことに尽きるだろう。これまでお菓子は家で食べるシーンがほとんどであった。しかし、グリコは会社でも食べる人たちが20%も存在することに気づいた。そこでいかにオフィスで食べてもらえるかを考え、ボックスを設置するという答えにたどり着いたのだ。リフレッシュボックスと名付けられているようにお菓子を食べて糖分を取ることでもうひと踏ん張りするためのツールとして食べてもらおうとしたのだ。

しかし、簡単にはオフィスでお菓子を食べてもらえるわけではない。お菓子をオフィスで食べてもらうためには数多くのハードルを越えなければならないからだ。お菓子のような関与度の低い商品には、多くの代替手段があることが普通だ。かつ、強い購買意欲はなく、少し時間が経ては気持ちはなくなってしまう。オフィスで食べるお菓子の場合であれば、オフィス内でリフレッシュするための手段はお菓子だけではない。コーヒーを飲むことも出来るし、休憩室で雑談することも出来る。さらに、自動販売機でジュースを飲むこともあるだろう。喫煙する人であればタバコもリフレッシュする手段である。

このようにオフィスでのリフレッシュ手段は数多くあり、コンビニまで行って買う人がいないのは当然であるわけだ。この困難な状況の中でお菓子を食べてもらうためには、デスクから遠くにあっては勝負にならない。だからこそ、お菓子ボックスをオフィス内に置くという戦術がとられたのだ。オフィス用お菓子を新開発してコンビニで売ったところであまり売れることはなかっただろう。

また、グリコの想定外だったのは売上の7割が男性であったということだ。当初は、オフィスでお菓子を食べるのは女性であり、グリコとしても女性が買ってくれるものと想像していたそうだ。しかし、オフィスにお菓子が登場すると男性が買い始めたのである。男性消費者も気づいていなかったニーズがあったのだ。結果的には、男性の隠れたニーズを喚起・満たしたことで成功したことになった。

成功要因は、当初の想定とは違ったがグリコの新しいお菓子を食べるシーンを開発するという考え方は素晴らしかった。また、そのシーンで食べてもらうためにボックスをオフィスに設置するという適切な戦術が結果的に男性消費者のニーズを満たすことにつながったのである。

マーケティング担当者として参考になるのは「利用シーンの開発」と「消費者自身が気づいていないニーズの開拓」という視点である。既存市場に既存製品で売上を上げるというと、多くの人が購入回数を増やすとか離脱率を下げるとか非常に小さい部分にフォーカスし過ぎてしまうことが多い。しかし、これでは努力の割にはほとんど売上を増加させることは出来ない。しかし、グリコの利用シーンの開発はこれまで利用してなかった人が購入してくれたわけだから、小さい部分にフォーカスするよりも大きな売上の増加を期待することが出来る。

マーケティング担当者であれば、売上・利益を増加させるために小さい部分にフォーカスするのではなく、新しい価値を提供することに力を使うべきだ。

そして、新しい価値を生み出すためには、徹底した消費者の観察・分析以外にあり得ない。アンケート調査することも手段の1つだが、多くの企業では、消費者の1日を時系列に分析する調査を実施している。出社してから退社するまでの中でどんな時にどのように感じるのかを考えるのである。このような調査手法であれば、代替手段が沢山あることにすぐに気づけるし、どうすればいいのか気づけるはずだ。また、消費者自身が気づいていないニーズを知るためのヒントを得ることも可能だ。

消費者を知るための手段は一つではない。データをいくら分析しても気づけることはほんの一部である。マーケティング担当者が様々な視点から徹底して消費者を知ることにこそ効果的な解決策があるはずだ。マーケティング担当者の大切な仕事は消費者の観察から始まる。そこがズレてしまっては解決策もズレることになるのは当然である。顧客をよく見ること・知ることはやはり最も大切なことなのである。

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