マーケティングでは、ターゲティングが重要であると言われている。
なぜか?
企業側からの視点で言えば、資源を最大効率で活用するためである。ターゲットを絞り込まずに万人受けを狙おうとするとどんなに資金があっても足りなくなり、全ての人にとって中途半端なメッセージしか伝わらず、結局顧客の中には何も残らない。
顧客側の視点で言えば、自分に必要なものであるとと認識しやすくなるからだ。万人ウケを狙うほど誰も見向きもしないが、ターゲットを絞り込むことで自分にとって必要なものとして認識されやすくなる。
ターゲットを絞り込むと売上が下がると思い込んでいる人がいるが、それは違う。
それはターゲットをデモグラフィックでしか見ていないからだと思われる。ターゲティングは市場を分類することではない。マーケティングにおけるターゲティングとは、顧客の知覚を奪い合うためにある。だから、「20代女性をターゲットとする」というのはターゲティングしていることにならない。もちろん20代女性がみんな同じだというのならそれでいいですがそんな世界はどこにも存在しない。マーケティングは、知覚の奪い合いなのだからどう知覚されたいのかを競合と比べて明確にすることがターゲティングと言えるのだ。
ターゲットを絞ることの重要性は上記の通りだが、企業がターゲティング「した場合」と「しない場合」とで顧客の頭の中では何が起きているのか?を述べてみたい。
私はいつも顧客が製品サービスを前にして顧客の頭の中でどんな思考枠(比較軸)が想起されるのかを考える。
ターゲティングされていない製品サービスの場合、顧客の中には明確な比較軸が想起されない。自分に必要なのか?どんなメリットがあるのかあやふやな状態である。どのようにこの製品サービスを理解すればいいのか考え方が分からない状態である。こうなってしまうのは上述したように企業の資源が分散されてしまい、企業のメッセージが明確なメッセージがないために自分に必要なものと知覚できないからだ。顧客からするとこの製品サービスを購入する理由が見当たらない状態であると言える。
一方、ターゲティングされた状態というのは、製品サービスを前にしたとき特定の思考枠(比較軸)が想起されることで、どういう製品サービスなのかが明確なものとして知覚される状態を指す。企業が資源を有効に使うことでメッセージがキチンと伝わり、この製品サービスがどのような時に有効であり自分にとって必要なのかどうかが明確な状態にしてくれるからだ。頭の中にしっかりとポジションが構築されるのである。マーケティングとは、このような顧客の頭の中の知覚の奪い合いである。どれだけ有益な知覚を顧客の頭の中に構築できるかの戦いなのだ。
このようにキチンとターゲティングされた場合、想起される比較軸は少ない数であることが普通だ。かつ、これまでにない比較軸が存在しているものである。そして、その比較軸は競合と比べて優位に立てるポジションでなければならない。
そして、競合他社と同じ比較軸で自社を訴求しても知覚されにくくなってしまうし、新しい比較軸が顧客にとって魅力的でなければ意味がない。
このようにターゲティングの作業とは、顧客の競合他社の製品サービスを前にして想起される比較軸を分析した上で、時代の流れなどを考慮して、自社の特徴を最大限に発揮できて、かつ売上利益を最大化できる比較軸を見つけることに他ならない。