マーケティングテクノロジーをを活用していないマーケティング組織はないのではないか?と思えるほど、テクノロジーなしにはマーケティングを考えることは出来ないと言えるのではないでしょうか。しかし、テクノロジーを深く理解していても、それを十分に活用出来ない企業が多いのは、何故なのでしょうか?今回は、複雑化するマーケティング業務を効率よく回すために何がボトルネックになっているのかについて考えてみたいと思います。
テクノロジーを活用するマーケティングでは、専門的な業務が同時進行で進むようになりました。以前であれば、システムに関する知識はそこまで要求されることもなく、マーケティング担当者は浅く広い業務で十分に対応することが出来ました。極端な言い方をすれば、顧客を知ることに集中していても大丈夫だったのです。しかし、テクノロジーがマーケティング業務に入り込むことによって、マーケティング担当者に求められるテクノロジー理解の習熟度は飛躍的に増加し、ひとりの人間で把握できるようなレベルではなくなってきています。1つのテクノロジーを深く理解することはそう簡単ではありません。例えば、MAは、様々なベンダーが展開していますが、1つのMAに習熟している人は沢山いても、複数のMAを深く理解出来ている人は殆どいません。なぜなら、MAは意外なほど複雑であり、何が出来て何が出来ないのかを正確に理解することは難しいのです。
そのため、MA1つを習熟するためには、これまでマーケティング担当者がやっていた顧客を知るための時間やプロジェクトマネジメントなどの時間を犠牲にしなければならないのです。結果として、あるMAに習熟している人は、プロマネのスキルが不足していたり、顧客理解のスキルが無いという状態になります。もしくは、プロマネのスキルはあってもMAの知識経験が不足していたり、顧客理解のスキルは高くても、MAの知識経験が不足しているような、いずれかに偏った人材しかいないという状態になります。このようなことが要因となり成果が出ないということになるのです。
また、MA設定・プロマネ・顧客理解を1人で実施することが成果に繋がりにくい理由は他にもあります。それはMA・プロマネ・顧客理解という業務は、全く頭の使い方が違うということです。MAの設定は、あらゆる機能を組み合わせることで目的を実現するために頭を使う作業ですが、この業務は非常に専門的であり論理的な業務です。一方で、顧客を理解する業務と言うのは、いわば想像力が必要な業務であり、顧客の気持ちや考えを共感する業務です。昔の説明の仕方をするのであれば、左脳的作業と右脳的作業と言えるのかもしれません。
このような考え方の異なる業務を1人でやるとどうなるかと言うと、各々の業務がおろそかになるのです。MAの設定も中途半端、顧客理解も中途半端なものになってしまいます。なぜ、このような状態いなるかと言えば、意外と人間は考え方をすぐに切り替えることが出来ない生き物だからです。これは私の実感でもあり、多くの仲間と話していて間違いないことだと思います。論理的な業務のあとに、非論理的な思考をすることは非常に難しいのです。例えば、MA設定をした後に、顧客がなにを求めているのか?という顧客理解の業務をしていていると、いつの間にかMAで出来る範囲のことしか考えなくなるということがあります。本来であれば、MAじゃなくて広告やPRなどの手段で実現可能にも関わらず、MAを基準に考えてしまい思考範囲を自ら狭めてしまうのです。MAの考え方を他の業務でも無意識に利用してしまうために、他の業務の質が下がるのです。それは、逆もしかりです。これが異なる頭の使い方をする業務を同時に1人で行うことのデメリットです。
このようにテクノロジーを活用出来ていないマーケティング組織というのは、考え方の違う業務を一人の人間が行っていたりすることが多くあります。その個人は非常に優秀であっても、人間である以上、直前の業務の思考方法に影響されてしまうということが絶対に起きてきます。そのようなときに、質の低下が起き、かつ設定ミスや顧客理解が浅はかになったりしてしまうのです。そして、失敗を恐れ1人の人間が確実に出来る範囲のこと以外の業務はしなくなり、成果に結びつきにくい施策しかできなくなるという悪循環に陥るのです。
「思考方法の違い」に注目して組織化することは、今後さらに重要になってくると考えられます。