マーケティングって何だろう?今日もそんなことを考えながら過ごしているわけですが、今回は「キャズム理論」と「電通九州の香月さん」の2つの考え方に顧客中心主義が見え隠れしていると思ったので、記事にしてみました。
キャズム理論
キャズム理論では、ビジョナリーと実利主義者との間のギャップが大きいために、それまでの製品をアピールするマーケティング手法では大きな市場を構成している実利主義者に対しては上手くアピールすることが出来ない。そのためにそのキャズムを超えることが出来ない企業が沢山あると説いています。キャズム理論では、このような徹底的な顧客研究を基礎にして成り立っており、それが2者間のキャズムを発見することに至り、そしてそのキャズムをいかに渡るのかについて書かれています。例えば、アーリーアダプターとビジョナリーが主要な顧客である初期市場においては、マーケティングは、その商品サービスのテクノロジーと製品に関することに重点がおかれており、どんな企業であるのかや安定性については大きな問題とはならない。しかし、実利主義者や保守派という大きなマーケットを構成する顧客においては、前述したようなテクノロジーや製品に関しては大きな意識はされず、どれだけの事例があるのかやその企業が業界標準を作り上げているかどうかが重要なポイントと考える傾向があります。大きなマーケットとなる実利主義者に切り込むために必要な事例が初期市場のためになく、さらに初期市場のために業界標準もないため、今までの様な製品を押し出すやり方は事例と業界標準を重視する実利主義者には通用しない。だから、多くの企業がそこで終わってしまう。キャズムを超えられない。一方、主要マーケットに切り込める企業というのは、それまでのマーケティングを変化させ次の顧客(実利主義者)に対応するために製品を改良したり、組織体制まで変更する。それが適切に出来るかどうかがキャズムを乗り越えることが出来るかどうかの大きな分かれ道であると説いています。
分かりやすさを求める
また、電通九州の香月さんによれば、売れる商品というのは、「分かりやすい」ことが重要であると言っています。これは、「分かりやすい」という事はつまり、自分自身の中の知識や経験や感情とその商品サービスを照らし合わせることでちゃんと自分の中に落とし込めたことを意味するものであり、「分かりやすい」という感想を言ってもらえたという事はつまり、その人の中にその商品のポジションが生まれたことを証明する事でもあるからです。そのために、誰もが知っている話で説明をしてあげたり、すべてYesと言える話をすることが重要だと言っています。【参考文献:
発見! 「スベらない」売り方!】
どちらも顧客中心主義
この2者の異なる主張ではありますが、私はこの2者の間には共通するものを感じています。それは、キャズム理論においても、電通九州香月さんの「分かりやすい」においても、顧客に合わせて製品サービスを提供しようとしているという事です。決して、自分たちの考え方を顧客に押し付けようとはしていない。必ず顧客の中でどのように当社の商品サービスを受け入れてもらえるかどうかを考えているのです。キャズム理論においても実利主義者がどんなことが決断において大きな部分を占めるのかについて徹底した研究を行い、その実利主義者が納得して購入してもらうための手法を考え出しています。決して、顧客を変えようとしているわけではなく、実利主義者が購入に至る要素を全て揃えることが重要であると言っています。また、「分かりやすい」においても同様にその商品サービスを受け入れてもらえるために顧客の中にある価値観や経験知識を十分に研究した上でそれらの顧客の中で商品サービスをどのような位置づけにしてもらうのかという点について徹底的に考えています。決して、購入する顧客を説得するのではなく、顧客の価値観に合わせてどう企業側が変化するのかという点に徹底的にこだわっています。そして、「分かりやすい」という感想を一つの目標とすることで自分たちの施策が成功したのか失敗したのかの評価基準にしているのです。
マーケティングは、顧客の行きたい方向に行かせてあげること
また、私も
過去の記事において、顧客は考えたいようにしか考えないし感じたいようにしか感じない。それに逆らってはいけないと書いています。顧客の行きたい方向に行かせてあげる事。マーケティングとはそのような事を言うのだと思います。マーケティングは、顧客が商品サービスに行きつくための最適な道を歩ませてあげる事です。そして、その最適な道は顧客の中にあり、私たちはその道をこうじゃないかああじゃないかと探っていくのです。そのような活動がマーケティングだと私は思うわけです。マーケティングは、顧客の注目を集める事ではありません。マーケティングは、顧客にとことん寄り添い何を望み何を考え何を感じているのか、感じたいのかを把握して、顧客のために企業が何をすべきなのか何が出来るのかを提示しそれを実行し、顧客の最適な購入前~購入~購入後の道を創ることだと思うのです。
マーケターに求められる資質
これは余談ですが、多くの書籍や記事で顧客中心に考えるべきと言われていますが、それを本当に実現することは非常に難しいです。それぞれの企業の特質や考え方などによって論理的な考え方をもとに顧客にとっての最適な戦略を実行に移すことは現実的には出来ないでしょう。しかし、だからと言って顧客中心に考えなくてもいいという事ではありません。私たちマーケターの仕事は、その顧客中心のマーケティング戦略の立案だけでなく、いかにそれを実行していくのかというさらに困難な日々の活動が今クライアントから求められている能力であると私は思うのです。