近年のマーケティングにおいて、新規顧客を獲得し、獲得した顧客を離脱させることなく維持することで効率的に売上を拡大していく施策を実施している企業が多くなりました。このことは、非常に効率的にマーケティングを進めようとする企業の姿勢が表れていると言えます。
しかし、多くの場合、新規顧客を獲得する担当部署と既存顧客を継続維持する担当部署が別々に存在することが多いことについては、いささか心配な気持ちになることがあります。特に一定の規模のある企業においては、部署が別々になっている傾向が特に強くなっていると言えるのではないでしょうか。もちろん、お互いに情報を交換しているにしても、新規顧客獲得と顧客の維持は、違うものであるという認識が根付いてしまうのではないかと心配になっているのです。
もし、マーケティングが商品サービスを販売する仕組み作りであるとするならば、新規顧客の獲得施策と獲得した顧客の維持施策は当然つながっているはずです。どのような人を顧客として獲得し、その顧客をどのように維持することで売上を拡大していくのかという戦略があるはずです。しかし、一定規模の企業においては、部署が分かれているがために、時間が経過するにつれて、各施策を個別に捉えるようになってきてしまう傾向があります。
結果として、新規顧客の獲得は上手くいっているのに、顧客を維持することが出来ていないという企業が非常に多くなってきている印象があります。なぜなら、新規顧客がそもそも維持する点において非常に難しい顧客ばかりだからです。言い換えれば、一時的なプロモーションに反応する人ばかりを獲得しているのであって、そもそも継続的に利用する意思のない顧客であったり、常にブランドを変えているような人ばかりを獲得しているということです。
このような場合、どんなに顧客維持の施策に莫大な予算と優秀な人材を投入したとしても期待するような結果を得ることは殆どできません。毎年毎年多くの離脱者を出し続けることになります。
ダイレクトマーケティングで有名な「レスター・ワンダーマン」はこのように言っています。
新規顧客獲得施策の目的は、数を多く集めることにあるのではなく、真に囲い込む価値のある顧客を選んで集めることにある。
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そして、顧客維持施策の目的は、顧客を知ることや顧客満足度を高めることにあるのではなく、企業が収益を獲得することにある。
と言っています。誤解がないように付け加えると、顧客満足度を上げる事は大切なことですが、しかし結果として、企業の収益に影響与えていない満足度なのであれば、意味がないと言っているのです。
企業は、もちろん顧客満足度を上げる努力をするべきでだと思いますが、それらのいかなる努力においても、収益に貢献しない顧客であると判断したのであれば切り捨てなければならない。そうしなければ、会社を維持することができないと言っているのです。
多くの企業が新規顧客を獲得することに最大の注意を払ってしまったり、とにかく顧客満足度を上げれば良いと考えてしまう事は明らかに間違いであると言えるのです。新規顧客を獲得する時から、どのようにして顧客を満足させ、どのように売り上げを拡大していくのかと言う戦略を持っているべきなのです。
新規顧客をとにかくとれば良いのではなく、継続して購入してもらえる人たちを集めることが大切。そういう意味において新規顧客獲得施策を担当する部署と既存顧客を担当する部署が別々になっている組織は、非常に効率の悪いマーケティングを実施しかねない組織体制の可能性があります。
既存顧客の離脱率が高いことを、既存顧客を担当する部署が責任を感じてしまうこともあるかもしれないですが、多くの場合、その原因は新規顧客の質が悪いことが最大の原因であるということはよくあることなのです。
担当部署が別々に分かれているとしても、新規顧客施策と既存顧客施策は統一したマーケティング戦略をもとに展開すべきです。獲得から維持まで首尾一貫した考えをもとに展開しなければ、非常に効率の悪く、収益に貢献しない施策を何年にもわたって継続してしまうことになりかねないのです。