重要なデータを導き出すことは難しい
日々、自社製品サービスのマーケティングをしていて、こんなことを思ったことがあるのではないでしょうか。
『いったい何がコンバージョンさせるために重要な要素なんだろう?』
どんなにデータを豊富に使える環境が整ったとしても、そのデータの中から重要なデータを抜き出すのは人間の仕事です(いまのところ)。そのために、ABテストを地道に繰り返したり、限られたデータから顧客行動を類推することでコンバージョンに重要であろう要素をマーケターの感覚で決めてきた人が多いのではないでしょうか。
しかし、それでは結局はマーケティング成果が属人的になってしまいますし、顧客が変化すると何が変化したのかが分からないためにマーケティング成果が低下してしまうこともあります。そのため、データのどれが重要で重要ではないのかを把握することが求められているわけです。データで見ることが出来るようになれば何が変化したからどうすれば良いのかが誰でも効果的な施策を取れるようになるからです。
「重回帰分析」 を使って重要な要素を導き出す
いきなり「重回帰分析」と言われても分からない人が多いかもしれませんので、簡単に説明しておきます。重回帰分析とは、例えば「身長」と「腹囲」と「胸囲」などの複数の変数から「体重」という1つの変数を予測する分析手法のことです。
また、重回帰分析は、複数の変数が「体重」に対してどれだけの影響を与えているのかということも分かります。影響度合いは「0~1」の数値で表されます。例えば、「身長の影響度=0.22」「腹囲の影響度=0.67」「胸囲の影響度=0.43」などのように表されます。この場合は、「腹囲」が体重への影響度が最も高いことが分かります。
このように重回帰分析は、複数の変数が1つの変数にどれだけの影響力を持っているのかを数値で表すことのできる分析手法です。つまりは、下記のようなことが出来るということです。
「資料請求のコンバージョン」という1つの変数に対して、「Aコンテンツ」「Bコンテンツ」「Cコンテンツ」という3つの変数がどれだけコンバージョンに影響を与えているのか?
「資料請求のコンバージョン」という1つの変数に対して、「サイトアクセス頻度」「サイトアクセス総数」「最終のサイトアクセス日」という3つの変数がどれだけコンバージョンに影響を与えているのか?
「資料請求のコンバージョン」という1つの変数に対して、「選択肢A」「選択肢B」「選択肢C」という3つの変数がどれだけコンバージョンに影響を与えているのか?=どの選択肢を選択した人が最もコンバージョンしやすいのか?
MAのデータで重回帰分析する方法
ここでは、MA(Hubspotを想定)に蓄積することが出来る「各ページの閲覧回数」のデータを使って重回帰分析することでどのページがコンバージョンに影響を与えているのかを分析する方法を記載します。
手順は下記の通りです。
(1)各ページを閲覧したらコンタクトプロパティの数値を「+1」するワークフローを作成
(2)一定期間経過後にメールアドレスと各ページのコンタクトプロパティの数値とコンバージョンのデータをエクスポート
(3)エクスポートしたデータで重回帰分析を行う。
※重回帰分析は、各種統計ソフト(SPSS,SAS,Rなど)のほか、エクセルでも簡単に分析することが出来ます。
詳しくは下記を参考に実践してみてください。
http://www2.kobe-u.ac.jp/~hamori/Jhamori/EXCEL2.pdf
http://www.ipc.shimane-u.ac.jp/food/kobayasi/multipleregression_excel.htm
http://www1.tcue.ac.jp/home1/abek/htdocs/stat/Excel/reg/reg.html
(4)なぜこのページがコンバージョンに影響を与えているのかを考える。
どのページが影響を強く与えているのかが分かったら、なぜそうなったのかについて考えましょう。簡単に予想がつく場合もありますが、なぜそうなったのかが分からない場合もあります。その場合は、顧客行動を類推して決めていく必要があります。
(5)効果的な施策を考える。
ここまでくればあとは、施策を考えるだけです。しかし、ここが最も重要であり最も難しいところでもあります。分析は出来る企業はたくさんありますが、効果的な施策を考えるのは今も昔も出来るところは多くありません。ここは経験豊富なマーケティング会社でなければできない部分でもあります。結局はこのスキルが不足しているとどんなにデータを集めて分析しても成果にはつながりません。ここでマーケティングの差がつく場合が非常に多いように感じます。
重回帰分析から顧客理解を深める
このような重回帰分析を使えるようになれば、数値で影響度合いを表すことが出来るようになります。こうしておけば顧客の変化が起きてもどのページの係数が低下したからコンバージョンが低下したのかがすぐに分かるようになります。具体的な変化が分かれば、なぜその数値が低下したのかという議論に入ることが出来て施策の実施までの時間が短く済みますし、施策の方向性を間違うこともありません。一方、この係数が分からない場合には、なぜコンバージョンが低下したのかという調査分析から必要になります。時間もコストもかかりますし、必ずしも原因が明確になるわけではありません。
また、重回帰分析をすることで顧客への理解が進むということも大きなメリットです。なぜ、そのような数値になるのかという議論を欠かさずに突き詰めていけばこれまでは分からなかった顧客の深層心理が明らかになり様々な施策にも応用することが出来るようになっていくはずです。