イノベーションのためにマーケティング担当者が考えるべきこと

マーケティング

Pocket

あなたの扱っている製品サービスは製品ライフサイクルの「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のどの位置に存在するのだろうか?商品にも市場にも寿命はあるものだが、衰退期に入ったからといってマーケティング担当者はそう簡単に諦めるわけにもいかない。どんな状況でも少しでも自社商品サービスの売上・利益に貢献しようとするものだ。

市場の活性化は、いつもイノベーションによって引き起こされる。イノベーションは既存市場の存在自体を脅かし、場合によっては既存市場が消滅する。しかし、生き残るためにはイノベーションを起こさなければならない。マーケティング担当者としてどのようなイノベーションを起こすべきなのか?方向性だけでも知ることは出来ないのだろうか?その答えはないが、ヒントならあるはずだ。

どのようなイノベーションを起こせばよいのか?そのヒントを「イノベーションのジレンマ」で有名なクリステンセンは説明している。彼は、イノベーションには2つのタイプが存在すると言った。

  1. 既存製品の改良や改善を求める「持続的イノベーション」
  2. 既存製品の存在や価値を否定してしまう力を備え、まったく新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」

の2つである。クリステンセンは、大企業ほど既存市場への依存が強いために「持続的イノベーション」が中心になり「破壊的イノベーション」が後手に回る「イノベーションのジレンマ」を提示した。さらにクリステンセンは、ある取材に応えイノベーションには3つのパターンがあるとも言っている。

(1)エンパワリング・イノベーション
これまで操作が難しくかつ高額だった製品サービスを誰でも簡単に使え、さらに価格を多くの人が購入できるように低く設定するイノベーションである。例えば、T型フォードである。それまでは非常に高価で一部の富裕層しか購入できなかったクルマを大量生産する仕組みを整え、価格を安価に設定することで多くの人が購入できるようにした。他にも、以前であれば大企業でしか使えなかったITを中小企業でも使えるようにしたクラウドサービスなどが該当する。このエンパワリング・イノベーションによって新たな市場と消費が生まれ、さらに雇用も増加することをクリステンセンは指摘している。

(2)持続的イノベーション
旧式の製品サービスを改良・改善し、新しい製品サービスに置き換えるイノベーションである。クリステンセンは、例としてプリウスを上げている。一般的な製品となったクルマをさらに進化させる取り組みである。この持続的イノベーションでは、既存市場に対して改良した製品を導入するため、新たな雇用が増えるわけではないと言っている。

(3)エフィシェンシー・イノベーション
既存の製品サービスをさらに効率的に改善し、より安く提供することができるようになるイノベーションである。
例えば、人を介して販売してきた保険商品を、インターネットで安くそして効率よく販売するネット保険会社である。このエフィシェンシー・イノベーションによって高度に効率化されることで雇用が減少するとクリステンセンは指摘している。

さらにクリステンセンによれば、この3つのイノベーションが繰り返されることが企業として理想的であるという。新たな市場と消費を生み出す(1)のエンパワリング・イノベーションからスタートし、(2)の持続的イノベーションで競争優位性を発揮する。そして、(3)のエフィシェンシー・イノベーションで雇用が減少しても、エフィシェンシー・イノベーションで得た利益を使って(1)のエンパワリング・イノベーションで雇用を再び創出するというサイクルが理想的だと言っている。

クリステンセンは、日本企業の多くは今(3)のエフィシェンシー・イノベーションに終始していると指摘している。ソニーやキャノン・パナソニックといった企業は当初(1)のエンパワリング・イノベーションを実施していた。しかし、1980年代からは日本企業は持続的イノベーションに集中し、そして1990年代からは、(3)のエフィシェンシー・イノベーションに終始しているというのだ。

このサイクルは、企業によって置かれている環境は異なるのですべての企業に適用することは出来ないが、1つのヒントになるのではないだろうか。もしあなたの企業が(1)のエンパワリング・イノベーションに該当するステージなのであれば、次に来るのは競合他社が多く現れ、より改善・改良された製品サービスの競争となる。もし、(2)の持続的イノベーションにステージにいるのであれば、次に起こることは新しいテクノロジーなどを活用した高度に効率化された世界である。そして、(3)のエフィシェンシー・イノベーションのステージにいるのであれば、利益があるうちにエンパワリング・イノベーションを起こさなければならないのだ。

いずれにせよ、今やらなければならないことを決めるためには、次に何が起こるのかを予測し可能な限り早めに動くことである。新しい時代を創り出す中心的な存在となるのか、それとも新しい時代についていくだけの存在になるのかは、今何をするのかにかかっているともいえるのだ。マーケティング担当者は、常に多くの情報に触れアンテナを張って、次にどのようなことが起こり得るのかを想定し準備しなければならない。

参考文献:全史×成功事例で読む「マーケティング」大全