マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

なぜ「いきなり!ステーキ」は米国で店舗大量閉鎖に追い込まれたのか?マーケティングにおいて価値観を変えようとすることは厳禁である。

「いきなりステーキ」がアメリカの店舗を閉鎖すると発表した。原因はいろいろと憶測が流れていますが定かではありません。

なぜ「いきなりステーキ」が日本では受け入れられ、アメリカでは受け入れていないのでしょうか?アメリカ進出直後の代表取締役社長のインタビューにその原因と思われる箇所があるので紹介したいと思います。

アメリカは、バーのカウンターで立ってお酒を飲む文化はあるけれど、ステーキというアイテムを食べるときにはやっぱりイスに座って食べた方がいい、という意見をいただきました。少数ですが「イスがないと行きたくない」という声もありました。商売をする上で、そのような意見は少数でも無視はできません。(中略)1号店でイスを導入したのは、オープンから3ヵ月経たないくらいのころです。

(中略)

この1年で、日本とアメリカではステーキに対する考え方がずいぶん違うことがわかりました。日本ではいきなり!ステーキが全187店舗となり、1店舗も撤退しておらず、全店が黒字です。日本でこれだけヒットしているのは、国民性の違いだと思います。もともとステーキの食文化ではない日本で、我が社は分厚いステーキを(市場平均価格の)半額にし、(焼き加減は)レアをすすめた。これまでファミリーレストランで薄いステーキしか食べたことがなければ、それは驚きますよね。いきなり!ステーキは日本人がステーキに目覚めるきっかけ作りをしたと思います。一方アメリカでは、ステーキの食文化は成熟している。したがって我々は特徴づけないと、ただステーキを提供するだけでは顧客は飛びついてきません。今後も「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」という日本のホスピタリティー、フロム・ジャパンのDNAは崩さないようにしつつ、アメリカ人がステーキを食べに行くときにハイテンションになるよう喜びを満たすことが必要だと思っています。

2018年2月17日Yahoo!News

このインタビューでまず分かることは「立ち食いスタイル」を1号店のみで実施しており、しかも最初の3ヶ月くらいしか「立ち食いスタイル」は存在しなかったという事実です。現在では、スツール(足の長いイス)が導入されているということで、進出後すぐに「いきなり!ステーキ」の特徴を一つ諦めていることになります。

また、社長自ら「 日本とアメリカではステーキに対する考え方がずいぶん違うことがわかりました。 」と言っているように事前のマーケティングが不十分か、マーケティングをそもそもしていないことが分かります。

日本での「いきなり!ステーキ」の特徴であるステーキを「安く・スピーディーに・おいしく」がアメリカでは「特徴になっていない」ことを代表自ら発言しているのです。「特徴づけなければ顧客が飛びつかない」と言っているように、現時点ではアメリカ人が飛びつくような店にはなっていないことを明言しています。

また、インタビューでは店舗同士が近くにあるという記者の質問に下記のようにも語っています。

紹介された場所を選んだだけで、あまり根拠はないんですよ。今年中に出す店舗の場所はもう決まっていて、今後もマンハッタンのミッドタウンが中心となり、一部ダウンタウン(ウェストビレッジ)も含みます。そのうち1店舗はベンジャミン・ステーキハウスの隣です。

2018年2月17日Yahoo!News

これは明らかに自社主導で米国進出しているわけではなく、米国進出のコンサルティング会社の言われるがまま、そのまま出店してしまったというのが正確なところと考えられます。

このインタビューは一年前ですが、この時に既に社長としてはかなりの危機感を持っていたか、もしくは既に厳しいことを悟っていたことが想像されます。かなり勇み足であったと言わざるを得ません。大量閉店も当然のように感じます。

しかし、米国進出に当たりマーケティングをしていたら上手くいっていたでしょうか?個人的には、どちらにしろ難しかったと考えています。

マーケティングの基本として、消費者が持つ「フィルター・思考枠を変えようとしてはいけない」と言うのがあります。言い方を変えれば、広く一般的に普及した良し悪しの価値観を変えるのはどんなに予算があっても不可能であるということです。例えば、日本人にとって茶碗を手に持って食べることは行儀が良いとされますが、欧米においてはお皿を手に持って食べることは非常に行儀の悪い行為です。私の知っているイギリス人は子供の頃にお皿を手に持って食べたら父親に殴られたと言っていました。それくらい欧米と日本ではフィルター・思考枠が異なります。

もし、ある欧米企業が日本人の茶碗を持って食べる価値観を変えようとしてもそれは企業レベルで出来ることではないことは容易に想像がつくでしょう。その美的感覚は、日本人の伝統的なルールであり、歴史そのものです。その考え方を変えようとなると日本文化の様々な部分を否定しなければならなくなります。そんなことはどんなに時間とお金があっても不可能です。

なので、マーケティングでは、消費者の価値観(フィルター・思考枠)を変えようとは絶対にしてはいけない。基本的にはどうやって既存のフィルター・思考枠を通して高評価してもらうかを考えるのがマーケティングです。別の言い方をすれば、お客さんを教育するのではなく、お客さんに寄り添うことです。

今回の「いきなりステーキ」の特徴となる要素は、非常に日本的な価値観を前提としたもののように感じます。特に「立ち食いスタイル」は日本人にとっては効率的で男性社会人にとってはポジティブなイメージですらありますが、アメリカ人にとっては「立ち食いスタイル」に日本人と同じような印象は持ちません。社長としては、そのスタイルをアメリカ人にも浸透させたいと考えたのかもしれませんが、それはあまりにも教育的であり、既存の価値観(フィルター・思考枠)を無視する形になってしまっています。立ち食いスタイルで回転率を高くするという目論見は、日本でこそ成功した手法であったのです。様々な面で「いきなり!ステーキ」がアメリカで成功する要素が少ないことはマーケティングをすれば明らかになったことでしょう。

また、そもそもですが日本企業は海外進出があまり上手くないと感じます。以前、海外進出をサポートする機会がありましたが、なぜか日本企業は海外市場(特にアジア市場)に対して上から目線です。日本での成功体験が強すぎるためか分かりませんが、日本人の感覚は素晴らしいという大前提で物事を進めてしまう。「日本人の美的感覚を海外の人にも知って欲しい」という耳障りの良い文言と共に物事が進みそして失敗する企業が非常に多いのです。これらの失敗は、アメリカ人や現地の人がどんな価値観(フィルター・思考枠)で物事を見ているのか?というマーケティングの基本を無視した結果でもあるのです。

当たり前ですが、日本人の感覚は世界共通ではありません。最後にホンダのCM(Go,Vantage point)のセリフを記載しておきます。

世界には約8000もの言語があるという。自分の外には自分の知らない感情が無数に存在し、まったく矛盾する幸福感を持つ人たちが、隣り合わせで生きているのだ。私のLOVEは誰かの悲しみだったり。

ホンダTVCM「Go,Vantage point」より

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