現時点ではAIよりも仮説検証の方が効果的なマーケティングにつながる

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ビックデータやAI使って分析することで売上を増加させる誰も気づけなかった新しい仮説が生まれると思われている。CRMのデータやMAのデータ・DMPのデータ・POSデータなど、消費者の行動のありとあらゆるデータを分析することにより事業を発展させる有益な仮説が生み出されると思われている。

しかし、多くの人がご存知の通り、現時点ではそれは幻想でしかない。実際には消費者のあらゆるデータを取得することはまず不可能である。そして、仮にそのあらゆるデータが取得できたとしたとしても、有益な仮説が導き出されるのかどうかは分からない。いずれ可能になるのかもしれないが、いつになるのかは分からない。

昔、スーパーマーケットのPOSデータから赤ん坊のオムツとビールが一緒に売れていたという有名な話がある。このように一緒に買われる商品を分析することを「バスケット分析」という。この分析によって、「お母さんからオムツを買うように頼まれたお父さんがオムツを買うついでに自分のご褒美としてビールを購入していた」という仮説が導き出される。まさにこれはデータから仮説が導き出された事例である。

さらに、楽天は父の日にカラーステテコが良く売れていることにデータ分析から気づき、翌年の父の日には大量にカラーステテコを仕入れて成功したという。しかし、それよりも前にユニクロは父の日にはプレゼント用としてステテコが売れるのではないか?という仮説を作り、成功している。ユニクロの場合は、データ分析をしたわけではない。あくまで店員や担当者の仮説であった。

こんな事例もある。中古車買取販売のIDOM(旧ガリバーインターナショナル)では、CRMなどのデータからどのような顧客がどのようなクルマを欲しがるのかを導き出すAIを開発した。そして、その精度は満足できるものであったそうだ。しかし、完成してしばらくして、現場の人間が昔からあるエクセルにまとめたマニュアルの方が精度が良く、メンテナンスが楽であることに気づいた。このマニュアルは現場担当者の経験をまとめたものであった。

また、こういった事例もある。スーパーの西友の話だ。ウォルマートが西友を買収した後の出来事である。ウォールマートでは、各商品カテゴリ―毎に売り場が決まっている。カテゴリ―マネジメントという手法である。そのため西友でもウォールマートにならい、カテゴリーマネジメントを実施していた。しかし、赤ん坊抱いて買い物する主婦にとっては買いたいものが一ヵ所に集まっていた方が良い。赤ん坊がぐずりだす15分以内に出来れば買い物を完了したいからだ。しかし、買いたい商品が違うフロア階にあったり、バラバラに陳列されていると買い物に時間がかかってしまう。そこで、ある担当者は赤ん坊を持つ母親のためのコーナーを設置した。赤ん坊を持つ母親が必要としそうな商品を1カ所にまとめたのだ。もちろん、これはウォールマートの規定違反である。しかし、売上は非常に増加した。

この西友のような施策も、AIを活用した分析によって施策が導き出されるのかもしれない。しかし、西友はデータを分析した結果から導き出したわけではない。あくまで母親の視点から見たときにどのようなニーズがあるのか?何が満たされていないのか?を考えた結果である。西友の事例は、具体的な顧客をイメージし、その顧客が困っていることや喜んでいるシーンを沢山想定し、多くの仮説を立てて、順番に検証していくようなやり方である。

一方、AIで分析するというやり方は、上手く仮説が出せる場合もあるが出せない場合もあるやり方である。データのメンテナンスや有益な仮説を導き出すために、特定のデータは排除するなど様々な工夫が必要だからだ。そのため、ビールとオムツのような売上増加につながる仮説が導き出されるかどうかは分からない。もしかすると、いつになっても何も手に入らないということも十分にあり得るのだ。さらに、現時点では消費者のありとあらゆるデータを取得出来ているわけではなく、一部のデータ(断片的なデータ)を使ってAIを動かしている。

そう考えると、今現在はまだ西友のような仮説と検証を繰り返す方が効果的な施策に早くたどり着くことが想定され、かつコストは安くなると考えられる。実際、ほとんどの企業はこの手法を採用している。それは上述したようにAIがまだコストの割に十分な精度を出すためのデータを持ち合わせていないことが大きな原因である。

AIは、まだまだ先の話である。今はまだ仮説と検証を繰り返す方法の方が有益な手法なのだ。