某大学の入学希望者数向上プロジェクトメンバーであるA氏は、入学希望者数を増加させるためにHubspotを導入した。まず始めたのが高校生をターゲットとしたメルマガ配信である。メルマガ登録者数は順調に増加し「1万人」を超えた。しかし、メルマガ登録してもらった高校生に対してパーソナライズして効果的に運用出来ているか?と言われるとまったく何も出来ていない。Hubspotのオートメーション機能であるワークフロー設定もメルマガ登録直後に送信されるサンキューメール送信くらいしか設定出来ておらず活用しきれていない。もっとアクセス状況やメール開封やクリックによって出し分けることが出来ないだろうか?このままだとHubspotは単なるメール配信ソフトになってしまう。そんな危機感を持っている人に対してHubspotの設定事例を紹介しながら説明していくシリーズである。
今回のHubspot設定事例では、メルマガ登録後に大学のWebサイトを訪問した回数によってバナーの掲載内容を出し分ける設定をご紹介したいと思います。訪問回数は多くの場合、その大学への興味関心の高さに比例するものです。そのため、何度も訪問している人と最初に訪問した人では興味の対象も違うし求める情報も違うはずです。だから、バナーの内容を訪問回数によって出し分けることはA大学を知ってもらう上で意味のある効果を期待することが出来ます。
今回は、下記のようにメルマガ登録後の訪問回数によってWebサイト上のバナーを出し分けるシナリオをHubspotで設定する方法について説明したいと思います。
・1回~4回訪問者 →「当校の特徴バナー」
・5回~6回訪問者 →「授業紹介バナー」
・7回~8回訪問者 →「サークル活動紹介バナー」
・9回訪問者 →「学費Q&Aバナー」
・10回以上訪問者 →「説明会申込バナー」
このシナリオを実現するためにはいくつか方法がありますが、今回は「ワークフロー機能」と「CTA機能」の2つの機能を使って設定する方法をご紹介します。
◆ワークフローの設定
まず、ワークフローの設定です。今回のシナリオでは主に2つの要素を設定をする必要があります。1つ目は訪問回数を計測するための「訪問回数計測設定 」。2つ目は、訪問回数毎にリストに振り分けるための「訪問回数別リスト振り分け設定」です。つまり、「訪問回数計測」で得た訪問回数の数字を使って「訪問回数別リスト振り分け設定」で各リストに振り分けるということをします。なぜリストに振り分ける必要があるのかはCTA設定の機能を知ることで理解出来ますのでとりあえず読み進めてください。
・「Webサイト訪問回数計測」設定内容
訪問回数の計測には下記の図のように設定します。この設定によって高校生がWebサイトに訪問するたびに「訪問回数」の項目に「1」ずつ加算されていきます。初回訪問時に「1」になり、2回目の訪問で「2」になるという具合です。
・「訪問回数別リスト振り分け 」設定内容
上記の設定で訪問回数を取得できるようになったので、その数字によって各リストに振り分ける設定をします。つまり、1回~4回の訪問回数の人なら「1回~4回訪問リスト」に追加する、5回の訪問だったら「5回~6回訪問リスト」に追加する、という具合です。
Hubspot上での具体的な設定は下記の図の通りです。
①『コンタクトプロパティの「訪問回数」が「4」以下だったら「1回~4回訪問者リスト」に追加する』、
②『コンタクトプロパティの「訪問回数」が「5」 もしくは コンタクトプロパティの「訪問回数」が「6」だったら 「5回~6回訪問者リスト」に追加する』
この繰り返しで
『コンタクトプロパティの「訪問回数」が「7」 もしくは コンタクトプロパティの「訪問回数」が「8」だったら「7回~8回訪問者リスト」に追加する』
『コンタクトプロパティの「訪問回数」が「9」だったら「9回訪問者リスト」に追加する』
『コンタクトプロパティの「訪問回数」が「10」以上だったら「10回以上訪問者リスト」に追加する』
という設定をしていきます。
全体像をキャプチャしたPDFを用意しましたので是非参考にしてください。繰り返しますが、このワークフローの前半部分では訪問回数を計測し、後半部分ではその数値によってリストに振り分けています。また、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、あらかじめリストは作成しておく必要があります。作成方法は別の機会にご説明したいと思います。
◆CTA(バナー)設定
次にCTA(call to action=バナー)設定です。HubspotのCTA(バナー)はどのバナーを表示させるかはリストによって管理されます。つまり、Aリストに入っている人がWebサイトを閲覧しているならAバナーを掲載するという具合に管理されます。今回のシナリオでは、最初に記載した通り下記のようになります。
・1回~4回訪問者リスト →「当校の特徴バナー」
・5回~6回訪問者リスト →「授業紹介バナー」
・7回~8回訪問者リスト →「サークル活動紹介バナー」
・9回訪問者リスト →「学費Q&Aバナー」
・10回以上訪問者リスト →「説明会申込バナー」
今回は上記に記載したワークフロー設定の通り、訪問回数によって各リストへ追加するように設定が完了しています。そのため、あとはリストとCTAを紐づける設定が必要となります。
では、具体的にHubspotでリストとCTAの紐づけ方法についてご説明いたします。
設定の順序としては、最初にリストを選択しそのリストに紐づけるCTAを選択するという順番です。
まず「コンテンツ>CTA」と遷移し、右上の「CTAを作成」ボタンの下矢印をクリックして「スマートCTAルールを設定」をクリックして下さい。
すると、下記のような画面が表示されますので「contact list membership」を選択して「次のステップ」をクリックして下さい。
すると、下記のような画面が表示されますので「1回~4回訪問者リスト」を選択して「次のステップ」をクリックして下さい。
次はCTAの作成もしくは選択です。
ここでは「新規作成」をクリックして新しくCTAを作ることを前提に進めます。
「新規作成」をクリックして「CTAの名前」と「リンク先」を入力します。
また、「デザインタブ」をクリックするとバナー画像のアップロードなどが出来ます。
「次のステップ」をクリックします。するとデフォルトCTAを設定するようにという表示が出ますのでデフォルトCTA(=どのリストにも含まれていない人に表示させるCTA)を先ほどと同じ手順で設定していきます。設定が完了すると下記のような画面になりどのリストに対してどのCTAが掲載されるのかの一覧が表示されます。
次に、他の「5回~6回訪問者リスト&CTA設定」「7回~8回訪問者リスト&CTA設定」と進んでいきます。追加方法は、右上のギアマークをクリックして「スマートルールを追加」をクリックして追加することができます。これでリストとCTAの紐づけが完了です。
そして次に忘れてはいけない重要なポイントがあります。それはCTAの順番です。実は、HubspotのCTAの順番には意味があります。基本的に一番上にあるCTAを優先的に表示するようになっておりこの順番を間違えると意図したCTAを掲載させることが出来ませんので十分に注意する必要があります。
例えば、「1回~4回訪問者用CTA」と「5回~6回訪問者用CTA」を表示させる2つのリストに入っている場合、どちらが表示されるかというとCTA設定で上にあるCTAが表示されます。つまり、下記のような順番で並んでいて両方のリストに入っている場合は「5回~6回訪問者用CTA」が表示されます。
逆に、下記のような順番で並んでいて両方のリストに入っている場合 は「1回~4回訪問者用CTA」が表示されます。
そのため、今回の設定では下記のような順番に並べる必要があります。下記のような順番に並べることで訪問回数が多いのに少ない訪問者に見せるべきバナーが表示されることがなくなります。
・10回目以上訪問者リスト
・9回目訪問者リスト
・7回目~8回目訪問者リスト
・5回目~6回目訪問者リスト
・1回目~4回目訪問者リスト
また、順番の変更と確認は右上のギアマークをクリックして「スマートルールを編集」をクリックした画面だけで変更確認が出来ます。普通のCTA一覧画面の順番は関係がありませんので十分に注意してください。
そして、最後にCTAのコードを表示させたい場所に埋め込むだけです。コードは右上のギアマークをクリックして「エンベット」をクリックした画面から取得することが出来ます。
あとは、ワークフローをアクティブにして完了です。
これで訪問回数によってCTAを出し分ける設定が完了しました。バナーの内容を出し分けることで閲覧者の状態に適したバナーを掲載することが出来るようになり、欲しい情報にアクセスしやすくなると考えられます。しかし、これで終わりではありません。最も大切なことは高校生の身になって今本当に欲しい情報は何だろうか?ということを考え続けることです。この部分はどんなにHubspotの機能を知っていても改善はしません。マーケティング能力が試させる部分です。Hubspotの機能を知ることも大切ですが最も大切なことではありません。最も大切なことは顧客を知ることであることを忘れないように取り組んでください。