マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

ヘビーユーザーへのマーケティングは「売上増加には貢献しない」

顧客の20%が80%を売り上げている。有名なパレートの法則である。

マーケティングに関わっている人であればこの法則を知らない人はいないだろう。実際に、業務においてこの法則に出会ったことがある人も多いだろう。しかし、ほとんどの人が「ここまでは極端な数値ではないが、そのような傾向がある」と認識しているのではないだろうか。40%の顧客が、60%の売上に貢献しているという程度だろう。

実際、パレートの法則の調査期間が短ければ短いほど20:80の傾向を示す可能性が高くなり、調査期間が長くなればその傾向が緩やかになることが示されている。なぜなら、長期間の調査によってライトユーザーが比例して増えていくからと考えられている。また、20:80になるのは、調査した期間にヘビーユーザーが偶然大量にいたことでそのような数値になるとも言われている。

また、上記のようなライトユーザーが多くヘビーユーザーが少ない分布は、多くの業界で一致している(ガソリンの給油など一部に例外はあるが)。さらに、どの国のどの業界においてもこのような顧客分布を示すし、同一業界のトップブランドと下位ブランドでもこのような分布を示す。(全てではない。この傾向は関与度の低い商品に現れる。BtoBは当てはまらないことの方が多い。)

さらに、以前の記事でトップブランドも下位ブランドも購入回数には大きな違いがないことを示した。例えば、シャンプーであれば年に6回程度の購入が限度であり、企業努力で購入回数を増やすことは難しいことを説明した。

何が言いたいのかというと、購入回数はブランド毎に変化せず、どのブランドでも上記のような顧客分布(ライトユーザーが多い)を示すのであれば、トップブランドと下位ブランドの決定的な違いは、ライトユーザーの獲得人数にあるということである。言い換えれば、ライトユーザーをどれだけ大量に獲得出来るかがシェア獲得に大きく影響しているということだ。

そうすると、こういうことも言える。売上が増加しているブランド(シェアを伸ばしているブランド)というのは「ライトユーザーが急激に増えている」ということであり(もちろんヘビーユーザーも増加しているがライトユーザー程の伸び率にはならない)、売上が縮小しているブランド(シェアが小さくなっているブランド)というのは、「ライトユーザーが急激に減少している」ということである。(トップブランドも下位ブランドも顧客分布の形は同じだから)

パレートの法則は、一般的にヘビーユーザーを大切にすることで「売上維持」に貢献するということを証明している。毎年、一部のユーザーからの全体の50%近くも売上ていれば当然である。しかし、上記で説明したことはシェアの増減に何が影響するのかということである。つまり、全体の売上が増加するのか減少するのかは、ライトユーザーの獲得人数に左右されるということだ。

売上を増加させることと、売上を維持することは全く違う。つまり、ヘビーユーザーへの手厚いサービスはシェア獲得(売上増加)には貢献しないのである。あくまで、ヘビーユーザーへの施策は、今年の売上を来年も維持するために貢献する。そのために、コストをかけるのであるから、短期的にはヘビーユーザーから得られる利益は減少する。しかし、そのコストによってヘビーユーザーへ適切なコミュニケーションが出来れば、LTVは向上するということだ。売上を長期間安定化させることに貢献するのである。

しかしだからと言ってやってはいけないのは次のような判断だ。つまり、ヘビーユーザーへの対応予算をこれまでより多く設定し、ライトユーザーを獲得する予算をこれまでより少なく設定することだ。この判断は、売上を落とす可能性を自ら増大させていることになるからだ。上記で示したシェアが縮小していく企業と同じような変化を促進させることになるのだ。

あくまでヘビーユーザーへの対応は「売上の『維持』に貢献する」のであって、売上の増加には(購入回数の制限が多くの業界であるので)貢献しない。売り上げの増加に貢献するのはライトユーザーの数の増加である。

近年、ヘビーユーザーへの対応施策の1つであるロイヤリティープログラムを導入する企業が多い。そのためにCRMの導入を進めている企業がたくさんある。そのことを最優先事項だと言っているような印象すら受ける。しかし、上記に示したようにシェアの維持にはヘビーユーザーへの対応は有効だが、シェアをこれまでより増加させたいというのであれば、ライトユーザーの獲得を目指さなければならない。各企業がヘビーユーザーへの対応を最優先事項にするということは、これ以上シェアの増加を目指さないと言っているようなものである。ただ、経済が低迷し今後も改善しないことを考慮すればそれは当然かもしれないが。しかし、それにしても消極的な施策であることは間違いない。

もちろんロイヤリティープログラムを否定するわけではない。言いたいのは、どんなにヘビーユーザーと良好な関係を保つことができるようになったからといって売り上げが大きく伸びる(シェアが大きく伸びる)のではないということである。

言い換えれば、『売上を伸ばしたいからロイヤリティープログラムを開始するというのは変な話だということ』である。

とはいえ、どの企業にも当てはまる法則があるわけではない。(あったら教えてほしい)このような傾向にあることは認識しつつ自社の戦略を構築していくべきであろう。

参考文献:「ブランディングの科学」

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