マーケティング課題を解決するに当たって、仮説を立てることは非常に重要である。いきなりデータに当たるような手順ではいつ解決できるのか分からない。しかし、仮説を立てることで問題点を早期に特定し、解決策を見つけることが可能になる。
そのため、多くのマーケティング担当者が、まず仮説を立てることを実践している。しかし、実際に仮説を立てて業務を進めても効率的に進めることが出来ないことがある。原因の一つとして考えられるのが、「良い仮説」と「悪い仮説」の違いが分からないことである。仮説を立てろと言われれば立てることは出来る。しかし、この仮説が良い仮説なのか悪い仮説なのかが分からなければ、表面的な仮説のまま業務を進めてしまうことになる。表面的な仮説では、本質的な問題からの距離は遠く、効果的な解決方法にたどり着くことが難しくなる。
そこで今回は、「良い仮説の条件」について記載していきたい。
例えば、「営業成績が上がらない原因を調べ、対策を練る」場合を考えてみよう。例えばこんな仮説を立てることが出来るだろう。
仮説(1):営業マンの効率が悪い
仮説(2):できない営業マンが多い
仮説(3):若手営業マンが十分教育を受けていない
仮説(4):営業マンがデスクワークに忙殺されて、取引先に出向く時間がない
仮説(5):営業マン同士の情報交換が不十分で、できる営業マンのノウハウがシェアされていない
仮説(6):営業所長がプレイングマネジャーのため、自分自身の営業活動に忙しく、若手の指導や同行セールスができていない
■【条件1】その仮説は掘り下げられたものか?
この6つの仮説のうち「3つは良い仮説」「3つは悪い仮説」である。
何となく分かると思うが、仮説(1)~(3)が悪い仮説で、仮説(4)~(6)が良い仮説である。仮説(4)~(6)の方が掘り下げが深いことが分かるだろう。仮説(1)の営業マンの効率が悪いという仮説は、効率がなぜ悪いのか?という原因まで掘り下げられていない。しかし、仮説(4)の場合は、なぜ効率が悪いのか?まで踏み込んでいるという点で違うのだ。仮説(1)のようなものは、非常に表面的なものである。この現象が起こる原因があるはずで仮説(1)は、そこまで踏み込まれていないため「悪い仮説」なのだ。
同様に、仮説(2)の「できない営業マンが多い」も同様に掘り下げられていない。しかし、仮説(5)は、情報交換が不十分で、営業ノウハウがシェアされていないことが原因ではないか?と踏み込んだものになっている。仮説(3)も表面的なものだが、仮説(6)は、プレイングマネジャー制度に原因があるのではないか?と掘り下げている。
仮説は思い付きで立てるものではなく、So What(だから、何?)を何度も繰り返して導き出すものであるという点を確認することが大切である。
■【条件2】その仮説はアクションに結びつくか?
2つ目の条件は、「すぐに実行できる解説策につながる」かどうかである。条件1で、しっかりと掘り下げられていれば、すぐに実行できる解決策につながるものになっていることが多い。もし、掘り下げたつもりでも実行アクションにつながらないのであれば、掘り下げが足りないのかもしれないし、方向性が違うのかもしれないと再度検討することが良いだろう。
いずれにせよ、仮説(1)~(3)のようなものでは、具体的な解決策につながらないことは分かるだろう。営業マンの効率が悪いから、効率よく働こうと言われても何をどうすれば良いのか分からない。もしくは、各営業マンが勝手に効率化を解釈して、各々がバラバラに動いてしまうということもあるだろう。しかし、仮説(4)のように、デスクワークに忙殺されているからではないか?という仮説なのであれば、デスクワーク専門のアシスタントを置くという解決策やシステムを導入してデスクワーク業務を半減するなどの解決策が出てくる。
良い仮説の条件は、「掘り下げられている」と「具体的なアクションにつながる」の2つである。これら条件に当てはめてみて十分なものが出来上がったら、次は仮説の検証や施策の検証のステップに入ればよい。つまり、複数の深掘りされた仮説からどの仮説が本質的な問題に近いのか?といったことや複数の解決策の中でも自社で実施できる施策はどれか?また、最も効果が期待できるのはどれか?と考えるのである。
参考文献:「仮説思考」内田和成著