「フィルターバブル」という言葉をご存知だろうか?知っている人も多いかもしれません。
Wikipedia によるとこう説明しています。
フィルターバブル (filter bubble) とは、「インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。
wikipedia
ご存知の通り、ネット検索の結果は、私たちが過去に閲覧したり検索した内容を優先的に表示させています。検索ワードが同じでも検索結果に表示されるコンテンツは人によって違います。さらに、SNSで「いいね」した内容によっても表示されるコンテンツは人によって違います。
この好みの情報に囲まれる「フィルターバブル」という言葉が広く知られるになったのは、トランプ大統領の選挙の時だと思います。フェイクニュースを一部の人たちが共有し、自分の思想以外の記事に触れることが少なくなったために偏った思想が暴走してしまったのです。
象徴的な事件は、ヒラリークリントン氏が売春組織に関与しているというフェイクニュースを信じて拠点とされたレストランを襲撃してしまう事件がありました。犯人が、このフェイクニュースを信じてしまったのは、クリントン氏を侮辱するようなフェイクニュースに取り囲まれ、まるでそれが事実かのように感じてしまったことが原因ではないかと言われています。
この事件は極端ではありますが、私たちは、私たちが好む情報に以前よりも取り囲まれる時間が長くなってきているのは間違いのないことではないでしょうか。
しかし、一方で私たちは同じような情報ばかりにウンザリすることもある生き物だという側面もあります。私はマーケティングに興味がありますが、毎日毎日マーケティングの情報ばかりに触れているといい加減、嫌になってきます。どんなに好きでも人間誰しも飽きるものです。そのため、違う分野の記事がないものかと探すようになるわけです。
しかし、他の分野の記事であればなんでも良いというわけではありません。やはりマーケティングに関連する記事に興味を示してしまいます。心理学であったり、行動経済学であったり歴史であったり、哲学だったりなど色々です。どこかでマーケティングに関わりのある記事を好んで読んでしまうのです。結局は、マーケティングから少し離れてはいるものの周辺にいてマーケティングから遠く離れようとはしないのです。それ以上先にいこうと思えば行けるわけですが、そうすることは滅多にありません。また、全く違う分野の記事を読んでも、「やっぱつまんない」って感じるだけなのです。
このような人がフィルターバブルに取り囲まれた人の特徴なのでしょう。
しかし、もしこんな人が増えてくるとしたら、企業はどのような影響を受けるでしょうか?ある意味興味を抱かない人は一生他の分野に興味を抱かない訳で、興味分野の壁が今まで以上に高くなってきていると言えるのかもしれません。以前であれば、周囲に違う趣味の人がいて、全く新しい分野に引き込まれるような機会があったのかもしれませんが、現代においてはそのような機会は間違いなく少なくなってきていると思います。
そう考えると企業はどんなに努力しても新しい顧客を獲得するのは難しくなってきたと言えます。これまでのようなやり方では、以前よりも効果は少なくなる可能性がありますし、実際にマス広告の効果は下がり続けています。
私たちは顧客の多様化と細分化された人たちの間に立ちはだかる高い壁が構築されつつある世界でビジネスをしなければならないと言えるのです。
このような時代において、企業が成長するためには、既存の顧客をしっかり守ることの意味が非常に高くなってきます。つまり、顧客を異なるカテゴリの商品に奪われたら最後。取り戻すことが非常に難しくなるということです。同じような商品であれば取り戻すことは可能でしょうが、全く新しい分野に興味を持っていかれてしまうと、自社製品の購入が減少するという事態になりかねません。自社の顧客は絶対に逃がさない。これはこれからの時代企業が生き残るためには絶対に必要な要素です。
しかし、企業は守ってばかりでは成長できません。いかに、新規顧客を獲得するかも重要になります。しかし、競合他社も守りを固めてくるわけですから今まで以上に新規顧客獲得は難しくなります。そのため、違うカテゴリからもいかに顧客を奪うかも考えることが重要になる訳です。高い壁に阻まれた顧客を奪うことはそう簡単ではありませんが、とはいえ、私がマーケティングに飽きて違う分野に興味を持ったように顧客は必ず興味分野の周辺には動いてくるものです。どの分野から自社の商品に近づく可能性が高いのかを見極めることで効果的に新規顧客を獲得できるはずです。
今回は「フィルターバブル」という視点から今後の企業のマーケティングについて考えてみました。結局は、既存顧客をより大事にしようという当たり前のことでしたが、今回のように違う視点から既存顧客の重要性について考えることで、色んなインスパイアが得られるのではないでしょうか。あなたの企業はどうでしょうか?どんな企業にも適用できるわけではないと思いますが、様々な視点で考えてみることはとても重要だと思います。