自社で新しい製品・サービスを導入するとき、「事例」を参考にする人も多いだろう。「事例」はその製品サービスがどのように使うことが出来るのか?自社で活用するときに参考になるのではないか?という疑問に答えてくれそうな気がするからだ。確かに、「事例」は参考になることはあるだろう。同業種の事例であればなおさら見てみたいものである。その製品サービスの使い方という側面だけでなく事業のやり方という側面でも興味をそそられるからだ。
しかし、その「事例」が実は「事実ではなかった」らどうだろうか?さんざん自社での運用方法や活用方法を「事例」を参考に検討したにもかかわらず、それが全てウソだったとしたら。お怒りになる人も多いだろう。しかし、この「ウソの事例」は実際に存在する。実は私自身も事例が勝手に作り上げられていく場面に直面したことがある。まだ導入直後なのに某製品サイトに過去1年間の活用実績が掲載されていることを知っている。もちろん、事例の全てがウソではない。世の中に出回っている殆どの事例は事実である。しかし、その中の事例のいくつかは「ウソ」が紛れ込んでいるのも事実なのである。
とある製品サービスを導入したら「売上が2倍になった!」「利益が3倍になった!」などなど具体的な数字が掲載される企業が非上場企業の場合は要注意である。売上も利益も公開されていないのだから確かめようがない。そのことを知って平気でウソをつく企業はたくさんある。しかし、具体的な数字があることで上長への説得が楽になるのも事実なのである。
なぜ、ウソの事例を掲載するのか?あなたも会社に勤めているのであればその気持ちはわからないでもないだろう。多くの人が事例を見たがる現状において成功事例を見せたいのは当然だからだ。失敗事例を掲載する企業もあるがそのような勇気ある行動に移せる企業は非常に少ない。ほとんどの企業は自社製品サービスを使ってもらうために良い部分だけを見せたがるものだ。
「ウソの事例」に騙されないためにどうすればいいか?その方法は、あらゆる情報に接するときに気を付けるべきことと同じであると私は思う。事例でも何でも何らかの情報に接するときは、情報は一側面を見たものでしかない。そのことを多くの人が忘れ、誰かに教えてもらえると思っていることが問題なのだ。本当に知りたいことはどこにも転がってはいない。ネットにももちろん転がっていない。本当に知りたいことは、情報を組み合わせ『自分自身で考えること以外に見つける方法はない』のである。考えることをやめてしまう人が多いと思う。自分に都合の良い情報を事例に求めている人が多いと思う。そんな人が多いから、企業も都合の良い事例を作ろうとしてしまう。そんな悪い循環が回っている業界はいたるところにある。
何でもそうだが、楽に成長することなんて絶対に出来ないのである。