情報の編集力とは何だろうか?それは多くの情報の中から、ある1つの視点から見た世界を作り上げる作業である。その編集力は使い方次第で良くも悪くもなる。例えば、ある人間のことを誰かに伝えようとするとき、悪意に満ちた視点から世界を作り上げることも出来る。その人の失敗や悪いところばかりを集め、それを構成していけば、まるでその人は極悪人のように感じられることだろう。逆に、悪い点には目をつむり、その人の良いところばかり集めて構成することも可能だ。そうすれば、その人は天使のような人間に見えるかもしれない。同じ人間であっても視点を変えれば全く違う世界を見せることが出来る。編集とは、どの情報が大切で、どの情報を無視するか、さらに重要と判断された情報をどのように整理し、伝達するかという行為なのである。
また、人間は編集された情報を好むものだ。なぜなら、そのままの加工されていない情報ソースを集め、そこから1つの視点を探り出すような行為は、あまりにも面倒だからだ。加工されていない、そのままの情報など実は誰も求めておらず、誰かが情報を加工し、特定の視点や角度から見た情報を欲しがるのだ。ここでポイントは、「特定の視点」という言葉だ。つまり、人はどんな視点からでも加工されていれば良いというわけではないということだ。人は、自分自身が見たい視点や角度から見た情報を欲しがるし、自分では思いつかないような視点から見た情報に感動するものだ。つまり、人を惹きつけ、感動させる編集というのは、情報を見る人が見たい視点、もしくは、本当は見たいのに気づいていない視点で見ているものだ。
つまり、編集力を強化するためには、いかに人が求めている基準、視点を見つけることができるか?であったり、誰も気づいていない新しい基準、視点を見つけることができるかにかかっているということだ。
このことは、当然のごとく、マーケティング思考を強化する上で大切なことである。なぜなら、マーケティングは顧客が求めるものを提供する行為に他ならないからだ。顧客が感じている課題を的確に見極めることがマーケティングの第一歩なのは誰も否定しないだろう。逆に、顧客の感じている課題を把握せずにマーケティングは出来ないのである。人々がどのような視点や基準で物事を見たいと思っているのか?を知ることなしに、マーケティングは出来ないのだ。
また、欲しいものは何でもある現代において、顧客自身が気づいていない視点や基準で商品やサービスを捉え直してやることで新しい価値を生み出すことも、当然のことながらマーケティングの役割である。ほとんどの人は、どんな視点・基準で物事を見たいのか知らない。それを企業が気づかせてやることで、大きな価値が生まれるのは、ウォークマンやiPhoneなどが証明している。
他にも具体例がある。ラーメン好きな顧客の視点で開発された「マルちゃん製麺」は、主婦の視点を取り入れることで、家族で食べる野菜たっぷりの鍋用ラーメンとして生まれ変わった。それまでのラーメン好きの人をターゲットにしたものよりも、多くの価値を生んだのである。視点や基準を変えることで、商品は全く違う商品になり、全く違う価値が生まれるのである。
もし、この編集力を鍛えることでマーケティング思考を強化できるのであれば、編集力を強化するためには、どうすれば良いのだろうか?それは、どんなモノゴトも様々な視点や基準で見ることである。あなた独自の視点だけでなく、友人や彼女、両親、その商品が好きな人、嫌いな人、何とも思っていない人など、様々な視点で物事を見る練習をすることである。この練習は、世の中に数多くの視点、基準、価値観があることに気づかせてくれる。幅広い視点、基準、価値観を持ち合わせることが出来るようになれば、きっとマーケティング思考を強化することが出来るはずなのだ。独りよがりの視点ではなく、人が魅力を感じられる視点や誰も気づけなかった視点をを見つけることができるようになるはずだ。ぜひ、今日から試してみてはいかがだろうか。