LOHACO限定デザインにしたら売り上げが3倍になったというニュースがありました。
2019年4月に花王から発売した「ビオレu 泡で出てくるボディウォッシュLOHACO限定デザイン」は、4月から5月中旬にかけて、同シリーズの既存商品に比べて約3倍の売れ行きを示した…」
日経クロストレンド6月26日記事
そして、このニュースを読んでいた人が下記のようなことを言っていた。
「売り上げが3倍も増えるなんてすごい!最近は、やっぱりデザインがとても大切な要素だよね!」
この発言は、デザインが売り上げに大きく影響していることを前提とした発言であるが、しかし、この考えは消して間違いとは言わないが正確ではない。なぜなら、3倍の売り上げを達成したのはデザインだけが原因ではないからだ。
このLOHACO限定デザインに関して言えば、「限定」の効果も寄与していると考えられる。限定だからこそ、買う人が増えたと考えることができるのだ。ボディーウォッシュという一部の人を除き強いこだわりを持たない商品の場合、買う理由はあいまいでふんわりしたものであることが多い。そのような状況の見込顧客に限定品というアプローチを実施することで買う理由が出来て売上が増加することがある。デザインはさておき、このような限定という要素に反応した人も一定数いるはずだ。
また、デザインそのものよりもデザインが変わったという「新しさ」も売り上げ拡大に寄与している可能性があることも見逃してはならない。特に、長年販売が継続している商品に関しては、顧客からすれば飽きを感じているものだ。最初こそ「いいな」と思っていた製品でも、一定の期間が過ぎれば顧客は新しさを求めて違う商品を購入する傾向がある。デザインを変えなくても他の要素を変えれば、同じような効果はあったと考えられるわけだ。
また、新デザインの商品は3倍になったとはいえ、既存のデザインの商品の売り上げについての言及がないことが気になる。つまり、既存顧客が新デザインの製品に流れ、既存デザインの商品の売り上げが落ちたという可能性もあるのだ。そのような場合は、一見成功に感じられるが、実際には効果はないと言うことになる。
このようなデザインだけが売り上げアップの大きな要因になる事は稀であり、ほとんどの場合は、複数の要因が絡み合い売上アップにつながっていると考えるべきなのである。
今回紹介している「ビオレu 泡で出てくるボディウォッシュLOHACO限定デザイン」はLOHACO限定デザインということなのでおそらくターゲット層は「仕事開始忙しい、生活にこだわりのある女性」であると考えられる。しかし、本当にこのデザインボトルがこのターゲット層からの売り上げアップに大きく影響与えたのかどうかについては詳細な分析が必要である。さらに言えば、施策の実施前にどのような効果測定をすべきなのかについて検討しておくべきだろう。そうしなければ、デザインを変えたから良くなったという非常に不正確な認識につながりかねない。
企画には、目的が必ずあるものである。しかし、多くの場合その企画を実施した場合の成功判断とする基準や測定方法については言及されることがあまりない。マーケティングに関わる人間としては、正確に測定するところまで考慮し提案・実施すべきである。
そのような部分まで考えることで、何がよくて何が悪かったのかを正確に知ることができるようになり、今後の企画に反映させていくことができる。しかし、もし効果測定を正しく実践しなければ、間違った認識を周囲に提供し、効果のない企画を継続させていく原因となる。