データベースを活用したマーケティングをしなければならないという。データの蓄積が可能になり、活用が可能だから使うべきだという。そして、上手くいけば売上・利益を拡大できるという。しかし、これはもちろん言い過ぎである。これまでデータベースを活用せずとも多くの企業が成長してきたわけで、別にデータベースを活用したマーケティングをしなければならないというわけではない。成熟市場であっても、市場が縮小しても成長している企業はあるが、それら企業がすべてデータベースを活用したことで成長しているわけではない。あくまで、データベースを活用するマーケティングという選択肢が増えただけであって、それを活用することで成長出来る企業もあれば、変わらない企業もあるというだけだ。自社に適合したマーケティングをすることが正しい答えだ。
とは言っても、せっかくのデータベースだから活用したいというニーズは相変わらず多い。今回はそのような人たちに向けてデータベースの活用方法についてご紹介したい。今回はRFM分析を使っていかにデータベースを活用するのか?という基本的なことを紹介する。
RFM分析を知っている人は多いだろう。コトバンクでは下記のように説明されている。
データベースを使ったターゲット・マーケティングで、顧客の過去の購買履歴を分析する手法。RはRecencyでもっとも最近購入された年月日であり、FはFrequencyで過去1年などの一定期間に何回購入されたかの購入回数、MはMonetaryで一定期間での購買金額を意味する。それぞれに企業独自に設定されたウェイトをつけ、その合計の評価点で、ダイレクトメールを送ったり、カタログを送ったりするときの顧客絞込み判断材料とする。RFM評価方式を利用することによってレスポンス率を高めようとするモデル。
コトバンク
この3つの指標をどのように活用するのか?今回はメール配信を効果的に送信することを前提に考えてみる。もちろん、DMでもよいし、LINEでもよい。
ここでは、RとFとMの項目に正しく値が入力された10,000人のリストがあることを想定して欲しい。
まず、3つの指標のうちどれか一つの指標から始める。ここでは、R(リセンシー)から始めることにする。このR(リセンシー)の列を直近の購入の日付順に並び替える。そして、並び替えたリストを5分割にして5~1の数値を割り振っていくのだ。つまり、10,000人のリストだとすれば、直近の購入日付の上位2,000人までの顧客に「5」を付与し、次の2,000人に「4」を付与していくのだ。それを、F(フリークエンシー)とM(マネタリー)も同様に行う。上記の作業を実施することで、R=「5」・F=「5」・M=「5」という、最近購入したことがあり、頻繁に購入もしていて、購入総額も高いという自社にとって非常に魅力的な顧客の人数を特定することが出来る。逆に、R=「1」・F=「1」・M=「1」という、ずっと昔に購入したことがあり、しかも1回しか購入していなくて、かつ購入金額も小さい人の人数も特定することが出来る。
つまり、「555」~「111」までの合計で125のセグメントに分割することが出来るわけだ。下記のリストはそのイメージである。

これらの顧客に分類した上で、リスト全員にメールを配信する。すると、各セグメントごとの開封率・クリック率・CV率などが把握することが出来るようになる。下記はそのイメージである。

このようにすることでどのセグメントが最もレスポンスを得られているのかが分かってくる。そして、このデータはRとFとMのどれがレスポンスに影響を与えているのか?やどんなコンテンツがどのセグメントに受けているのか?など様々な仮説を立てるための材料となるはずだ。
また、このようなことを言うと反応率の低い人への無駄なメール送信はしないほうが良いと思われるかもしれないが、そんなことを言いたいのではない。あくまで、RFMという切り口でデータベースをセグメントした場合は反応がなかったというだけであり、異なる切り口でデータベースをセグメントすることで反応を得ることが出来る可能性がある。
例えば、購入商品のカテゴリで区分して、各カテゴリに適応したコンテンツを当てると反応することもあり得る。つまりは、データベースを様々な切り口でセグメントしてみて最も高いレスポンスが取れる切り口を見つけるテストを何度も繰り返していくのだ。
また、注意点としては、レスポンスの定義である。ここではあまり明確に定義していないが、ある切り口でデータベースをセグメントしてメール送信したら、開封率とクリック率は高いが商品購入率は低い場合、それを良しとするのかということを明確にしておくべきだ。コンテンツを見てもらうことが目的であれば、クリック率が高いことは良いことだが、商品購入をレスポンスと定義するのであれば、違う切り口でセグメントして商品購入率を高める試行錯誤をしなければならない。
さらに、ボリュームも重要だ。商品購入率が40%あるセグメントを見つけることが出来たとしても、そのセグメントの人数が10人しかしないのであれば大きな成果にはつながらない。しかし、どうすればこのセグメントの人数を増やせるかを検討するための材料にはなるだろう。
今回は、RFMという3つの指標を切り口にデータベースをセグメントしたが、これはあくまで一例である。おそらく皆さんのデータベースには様々なデータがあるのだろう。それらをどのように組み合わせてセグメントすることが最も効果的なのかを探して売上・利益に貢献してもらえれば幸いである。
参考文献:顧客生涯価値のデータベース・マーケティング