マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

顧客は商品サービスではなく、共に生きる『仲間』を求めている。

以前、私が勤めていた会社はマーケティング会社だったが正直なところ提案する内容について感動したことはなかった。しかし、売上と利益は増加していた。そして、クライアントはそのマーケティング会社をさらに信用するようになっていくようだった。私にはその理由が分からなかった。なぜこんな提案でこれだけの利益を生み出すことが出来るのだろうか?はたからすれば、正直なところ素晴らしいマーケティング企画とは思えない。でも、素晴らしい結果が出てくる。

私は優秀なマーケッターになりたかった。優れたマーケティング企画を生み出すことが出来ればお客さんの会社の売上を伸ばすことが出来ると考えていたからだ。そうすれば、沢山のお金ももらえるとも思っていた。だから、私は毎日のようにお客さんの売上を伸ばすために考えた。どうすればお客さんの売上と利益を増加させることが出来るのだろうか?今のクライアントにはどんな問題があるのだろうか?競合他社はどうしているのか、クライアントが実施可能なことは何か、クライアントの強みは何か?などなど。

そんなことを考え論理的にも正しいと思われるマーケティング戦略を自信をもって提案する。しかし、クライアントは私の提案を受け入れることはなかった。その理由が分からなかった。そして、上司が考えた私からすれば素晴らしいとは思えないマーケティング戦略が採用されるのだった。

私は悔しかった。なぜダメなのか分からない。どうしてクライアントは私の戦略を採用しないのか。どうして上司の戦略を採用するのか。

上司はいつもこう言っていた。

『クライアントは優秀なマーケッターを求めているわけじゃない。マーケッターでありビジネスマンを求めている。マーケッターは、クライアントの状況を踏まえどう進むべきかを考えマーケティング戦略を提案する。ビジネスマンは、クライアントの状況を知り、クライアントの内部に深く入り込み、クライアントがどんな問題を抱えているのか、クライアントと一緒に考え、本音を引出し、その問題を抽出し共有する。』

当時の私は何のことを言っているのか分からなかった。上司が何を言いたいのか、頭では分かってはいたが、しかし、私は素晴らしい戦略を提案さえ出来ればいいんだと、どこかで強く思っていた。ビジネスマンとしての能力ももちろん必要ではあるが、マーケッターに最も求められているのはマーケティング戦略の提案であると考えていた。しかし、それが最も間違っていたのだ。

私はその後、独立した。ある会社を起こして経営者となった。自分の力を試したかった。クライアントに拒否された私の能力が実際どんな結果をもたらすのかを知りたかったからだ。1年目2年目と順調に推移した。私はやはり正しかったと思った。ほらみろと思った。やっぱりこれでいいんだと自信を持ち始めていた。

しかし、3年目トラブルが起こった。主要クライアントである企業が、料金を支払わないという事態が起こったのだ。客観的に見れば完全に下請けイジメであり、私には全く非はなかった。私も引かなかったが相手も引かなかった。結局は、かなりの損失をかかえることになり、それ以来、そのクライアントとは仕事をしなくなった。どうしようもなかった。相手がそのような対応でくれば、私としてもそれなりの強い態度で出るしかない。クライアントの言いなりになってしまっては、結局は遅かれ早かれ損失を被ることになるからだ。利益の出ない案件をいくらやっても意味がない。それが早まっただけだ。そして、一気に窮地に追いやられた。かなりの部分の売上も利益もそのクライアント企業からもらっていたからだ。結局はそれが主な原因となり3年目に廃業した。会社にお金があるうちに廃業することで今後の立て直しを図ろうと考えたからだ。自分のキャリアのこともあるし、今後の業界の事も考慮した合理的な判断だったと思っている。最終的には利益が出ていたので、ここまでよくやったと思ったくらいだった。

しかし、同時にクライアントとの関係について考えるようにもなった。結局はクライアントとの関係は一体なんだったんだろうと。こんなにも簡単に崩れ去ってしまう関係って何なんだろうかと。私はクライアントに十分な利益を提供していたと思っていたし、その対価も多いとは思わなかった。しかし、クライアントは私の会社に対してヒドイ裏切り行為をした。他の会社に任せることは出来るものの私が提供できるものには及ばないことも分かっていた。絶対に私のやっている事業はクライアントにとっては魅力であり、利益になると考えていた。他社には出来ないことを出来ていると考えていた。しかし、それをなぜクライアントはいとも簡単に捨ててしまうのか理解できなかった。当社との取引がなくなることで、クライアントはある一定の事が出来なくなることは明白であった。

しかし、私は薄々感ずいていた。結局は、人間関係だと。どんなに素晴らしい商品やサービスを提供できても、人間関係が構築出来ないのであれば、すぐにクライアントとの関係は崩れてしまう。逆に大したことはない商品サービスであろうと、人間関係が強固に構築することが出来ればそう簡単にクライアントから捨てられることはないことを。

全てのビジネスの基本は信頼で出来ていると私は思っている。ビジネス上の取引は信頼によって成り立っている。しかし、裏切った会社と私の会社の間に信頼がなかったわけではない。なぜなら、いくつもの案件を頂き、それを何度も成立させ、サービスを提供出来ていたからだ。だからこそ、何度も案件をその後も頂けていたのだと思っている。しかし、私はその信頼の重要性に気づいていたかと言われればそうではない。上述したように私は信頼よりも、商品サービスの質の高さや自分しか出来ないことは何かという点が最重要であると考えていた。つまりマーケティング能力を磨くことが最も重要であり、大切なことであり、それがあれば信頼さえも得られるとさえ思っていた。

今思えば、上司の戦略が採用され、私の戦略が採用されなかったのはその点に原因があったのだ。つまり、誰が言うかによって、その提案内容も受ける印象は違うし、採用されるかどうかは戦略提案の内容だけが考慮されるわけではないのだ。それ以前の信頼の構築という点において私は圧倒的に劣っていたのだ。

上司は、お客さんとのコミュニケーションを本当に大切にしていた。そこまでするかというくらい大切にしていた。そして、クライアントもその重要性を感じていたし、進んで上司に会いに来ていた。それが出来るのは信頼関係が構築出来ているからに他ならない。そして、その信頼関係があるからこそ、普通は知りえないクライアントの内部情報を得ることも出来るし、本当の問題や課題を知ることが出来るのだ。クライアントも結局は人間である。信頼関係を得ることが出来ている人と出来ていない人に提供される情報は絶対に違うのだ。

近年はその傾向は弱まったのかもしれない。どんな相手でも論理的で正しいと思われることが重要視される傾向にはなったと思う。その結果として、多くの人にチャンスが与えられ、クライアントとしても様々な選択肢を得ることに成功しただろう。しかし、決してなくならないモノもある。それは信頼関係の重要性である。結局は人間がする仕事である以上、好き嫌いは出てくる。合う合わないというものが出てくる。どうしても信頼出来ないという事も出てくる。

『クライアントは優秀なマーケッターを求めているわけじゃない。マーケッターでありビジネスマンを求めている。』

これはつまり、クライアントやお客さんは素晴らしい問題解決方法や商品サービスだけを求めているのではないということだ。クライアントやお客さんに常に寄り添ってくれ、クライアントやお客さん自身の問題や課題に耳を傾けてくれる姿勢や努力という信頼関係も同時に求めているのだ。

私の会社がやっている事業内容に魅力は感じてはいても、クライアントの内部に深く関わり、クライアントの問題点を一緒に考え、問題点を共有してその問題解決のために共に動いていたかと言われればそうではないと思えるからだ。いわば、私は上手く利用されたのだ。クライアントにとって都合の良い時に使ってもらっていただけであり、真のクライアントの課題や問題を解決してはいなかったのではないかという事である。クライアントのためになっていると思っているのは自分だけで本当はクライアントはそこまで重要視していなかったという事である。私はクライアントに寄り添い常にクライアントの問題や課題に対する真摯な姿勢や努力を怠っていたのだ。だからこそ、クライアントの内部に深く関わるようなことが出来なかったし、本当の問題や課題を知ることが出来なかった。だからこそ、クライアントは私との仕事に対して実は魅力を失っていたということである。

近年は特に問題や課題は変化する。時代の変化が速いために昨日まで課題だったことがそうではなくなり、違う事が課題となっていることさえある。私はその変化に気づけなかったのだ。なぜなら、問題解決能力を磨くことばかりに気を取られ、お客さんとの信頼関係の構築を怠ったからだ。怠ったから、お客さんが求めているものが変化していることに気づけなかったのだ。

私が起業に失敗したのは全てそこにあると思っている。クライアント・お客さんに寄り添うことが出来なかった。寄り添っているつもりだっただけで本当は違ったという事だ。真のクライアントの課題や問題点を解決するための仕事をしていなかったという事である。それ以上の何物でもないと今は思っている。

ある程度のマーケティング能力があれば十分である。それ以前に信頼構築が出来るかどうかによってマーケテイング戦略提案の質に大きく関わってくるのだ。信頼を得られない状態では決して素晴らしいマーケティング提案なんて出来ない。限定された情報で戦略提案することになるからだ。しかし、信頼が構築できるのであれば、多くの情報を得ることが出来るし、共に仕事をしたいとクライアントに思わせることが出来る。同じ方向を向いて共に戦う『仲間』という意識を醸成することが出来る。どんなに素晴らしい提案でも共に戦う『仲間』であると感じない人間とは仕事はしない。それは人間だからである。信頼があれば多くの情報を得ることが出来て、その結果として素晴らしい提案が出来るようになる可能性ははるかに高くなるのだ。

これはBtoBに限ったことではない。BtoCの世界でも同様である。お客さんは単に課題解決法や素晴らしい商品サービスだけを求めているのではない。お客さんと一緒に考えてお客さんが抱える課題の解決に向けて共に取り組む『より良い人生を生きるための仲間』を求めているのである。単に課題解決が出来る便利な商品サービスだけを享受出来れば良いのではない。そんな会社はいずれ他社にとって代わることになる。しかし、自分の課題を解決するための『より良い人生を生きるための仲間』とお客さんが考えてくれるようになれば、そう簡単に他社に流れることはない。長期的な顧客になる。これからの時代、商品サービスで差別化できなくなった時代においてこの部分の信頼関係を築けるかどうかが生き残るためのポイントとなるのは間違いない事であると考えている。

 

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