CRMを導入することで既存顧客との良好的な関係性を構築することが出来ると言われている。購買履歴やコンタクト履歴、プロフィール情報などから最適な情報を提供することが可能であり、適切なコミュニケーションが可能だと言われている。これまでであれば、一人ひとりに異なる対応することは難しかったがCRMによってそれが可能になるという。
確かにそのようなことが可能な側面はある。しかし、間違いないことはCRMを導入すれば上述のことが可能になるわけではない。適切なデータを入手する必要があるし、それらデータを有効に活用するための考え方とコミュニケーション力が要求される。WikipediaにはCRMの問題点として下記のような記述がある。
CRMは、1対1の関係性で顧客の利便性向上、満足度・信頼度を高めて顧客価値(Life Time Value)最大化を目指しても、過去のCRMプロジェクトがみな成功したとは言い難い。つまり、 注文履歴データベースをRFM分析して優良顧客を抽出して狙いを付け、ディスカウントセールを行う為のDM送付やコンタクトしたり、 期間内無利用顧客を抽出し、購入を促す為にクーポン付きDM送付や電話をかける行為は、顧客満足向上どころかむしろ嫌厭される。 CRMは「囲い込み」や「顧客単価向上」を目指す活動と思われがちだが、それだけでは成功しない。そもそも、「顧客視点に立って満足度を高め、長期的関係性の中で成功」させる事が本質である。それを理解し活用する為には、顧客心理への造詣・知識・ノウハウ・経験が必須である。教条的な押し付けめいたアプローチによって顧客との関係性が構築・維持出来るはずはない。
wikipedia
多くの企業が「顧客視点に立って満足度を高め、長期的関係の中で成功させる」ことに至っていない。その原因は様々であるが、導入企業側にCRMを運用するための視点が欠けていることが一つの原因である。CRMベンダーは導入されることがゴールであることが多く、最も重要な運用においては企業側に一任されてしまう。
企業のCRM運用担当者はどのような視点を持つべきなのだろうか?参考になる考え方が元アクセンチュアの村山さんと三谷さんの著書「CRM-顧客はそこにいる」にある。今回はその考え方を紹介し、少しでもCRM運用に役立ててもらえればと思う。
「CRM-顧客はそこにいる」では、CRMを運用するに当たって顧客のエージェントになるべきであると提唱している。現代の消費者は購買決定までにさまざまな情報を収集し比較・検討しなければならない。しかし、商品の爆発的増加・選択肢の増加によって消費者はどのように商品を選ぶべきなのか?何が最も適しているのかが分からなくなってきている。そこで企業に求められる要素の1つとして、消費者の嗜好や消費パターンなどのデータから最適な商品サービスを提示できる顧客のエージェントになることが必要とされているという。
この著書では顧客エージェントとして提供すべき6つのバリューを提示している。
(1)カスタマイゼーション
嗜好、消費パターンを記憶して、商品・サービスをニーズに合わせて作る・組み合わせる。(2)ワンストップ
必要なニーズに関連する商品・サービスを一ヵ所で提供する。
(3)マッチング
中立、客観的視点で、商品・サービス群の中から消費者のニーズに合うものを探す。
(4)ジャストタイミング
必要性が最も強まり、消費者にとってふさわしいタイミングで商品・サービスを提供する。
(5)レコメンデーション
ニーズの予測・確認・修正を繰り返し、嗜好、消費パターンに応じて見合う商品・サービスをピンポイントで提案する。
(6)メタプロダクト
消費の背景を理解した上で、高次のより明確なニーズに対して、すべての商品・サービス群を目的実現のためにセットで提供する。
「CRM 顧客はそこにいる」
CRMのデータを活用して様々な価値を顧客に提供しようとするとき、この6つのバリューは参考になる。特にCRMのデータを前に効果的な施策が実施できない企業は参考にして欲しい。6つのバリュー全てを実施しなければならないわけではない。どれか1つでもよい。顧客にとって最も価値となるものはどれなのか?そして、自社のデータで実現することが出来るのはどれなのかを検討することで施策の方向性が見えてくるはずだ。
参考文献:CRM 顧客はそこにいる