マーケティング関連の記事を書いていますが、基本思いつきのメモです。なので、記事を信じないでください(笑)

なぜ、マーケティング戦略における「差別化」だけではリーダー企業に勝てないのか?

チャレンジャー企業が同業界のリーダー企業に勝つためのマーケティング戦略と言えば何を思い浮かべるだろうか?
また、リーダー企業がチャレンジャー企業の攻撃に対してどのように対応するのがマーケティング丄、正しいとされると言われているだろうか?おそらく多くの人が想い浮かべるのは、チャレンジャー企業は「差別化戦略」によりリーダー企業を攻撃し、リーダー企業は「同質化」によりチャレンジャー企業の攻撃から身を守るという戦略だろう。例えば、チャレンジャー企業が「ドライビール」を出して差別化してきたら、リーダー企業も「ドライビール」を発売することで「同質化」するということだ。

そのため、多くのチャレンジャー企業は差別化に躍起になる。しかし、多くの場合チャレンジャー企業の「差別化戦略」はリーダー企業の「同質化」によって勢いを失うものだ。なぜなら、「模倣されない差別化になっていない」からだ。多くの場合、リーダー企業は多くの差別化戦略に対して同質化によって対応が可能だ。言い方を変えれば、「模倣されない差別化」は現実的には達成が非常に難しいのだ。

リーダー企業はチャレンジャー企業よりも技術力や人材を集める力など多くの面で上回っており、一時的にリーダー企業によってシェアを奪われたとしても、すぐに「同質化」するだけのお金と人材を整えることが出来るからだ。独自技術とは言っても、リーダー企業からすれば1年もすれば開発できてしまう場合が多い。もちろん、特許を取得するなどによって保護する場合など、同質化出来ない場合もあるが、そのようなことは滅多に起こらない。

つまり、チャレンジャー企業がリーダー企業に勝つためには、独自技術による差別化だけではリーダー企業からシェアを奪うことは難しいのが現実だ。実際、多くのマーケティング担当者からは差別化ポイントを考えても見つからないという声が聞かれる。きっとあなたもそう思っているはずだ。

では、どうすれば良いのか?この記事では、チャレンジャー企業の「リーダー企業の組織に関する検討」の重要性について書きたいと思う。実際問題として、チャレンジャー企業はがリーダー企業に勝つためには、「リーダー企業の対応の遅れ」などのリーダー企業特有の病気が発生しなければ難しい。分かりやすく言えば、リーダー企業の失策がなければそうそう勝てるわけではないということだ。

例えば、アスクルとコクヨの競争はその典型である。アスクルが会社として独立して事業を開始したのは「1997年」であるが(事業自体は1993年から文具業界2位のプラスが開始していたが、1997年にアスクルとして独立)、コクヨがアスクル事業の同質化のために開始したサービス「カウネット」は2000年に開始している。実に3年もの違いがあるのだ。これはコクヨの明らかな失策である。

なぜ、これほどまでの遅れが生じたのか?これは推測で言われていることなので、正確ではないかもしれないが、コクヨの既存の優良卸企業や優良小売店へのコクヨからの配慮があったのではないか?と言われている。「有力な卸の〇〇さんに迷惑をかけててはいけない」「小売店さんの事業を圧迫しないように配慮しなければならない」といった社内の声が激しかったのではないだろうかと言われているのだ。そして、結果としてそれら卸や小売店と合意可能な解決策を見つけるために多くの時間がかかってしまったとされている。結局、合意できたのは卸や小売店の多くがアスクルの脅威を実感し始めたことが原因ではないかと言われているのだ。

実際「カウネット」のモデルは卸や小売店への配慮が行き届いている。アスクルが自社と顧客の間にエージェントを1段階だけ入れているのに対して、コクヨの「カウネット」は卸と小売り店の両方を協力者として取り込む2段階のエージェント構造を採用している。そのため、「カウネット」の方が高コストになってしまっているのだ。

コクヨからすればこれができることの限界だったのだろう。そして、コクヨからすれば自社も卸も小売店も満足できるものと考えていたはずだ。しかし、アスクルからすればこれは完全に優位に立てる結果となった。

このアスクルの事業は、本来コクヨからすれば同質化は簡単なことであったはずだ。アスクルのビジネスモデル、最先端のITをフルに活用した物流システムなど優れた点を真似ることはコクヨからすれば出来たはずだ。しかし、コクヨには既存の卸企業や小売店との付き合いが足かせになって、それが出来なかった。アスクルに市場シェアの多くを占められる結果となったのである。

チャレンジャー企業は、独自技術による差別化だけでなく、市場をけん引するリーダー企業の社内合意形態なども含めて、自社の戦略がリーダー企業にどのような行動を引き起こさせるかを検討することが重要だ。もし、チャレンジャー企業の戦略がリーダー企業の素早い合意形成を可能とするものであればすぐに同質化されてしまうだろう。しかし、チャレンジャー企業の戦略が、リーダー企業の社内合意形成に時間を要する類のものであれば同質化に遅れが生じるはずだ。

アスクルがそれを狙っていたのかどうかは不明だが、アスクル事業は、コクヨにとって合意形成の側面において同質化が困難なものであったからこそアスクルは成功したと言えるのである。マーケティングの教科書には「リーダー企業の合意形成について検討することが競争に勝つための必要な要素である」とは書いていない。しかし、現実の世界では技術的な差別化よりもこのような合意形成の部分に大きく影響することが多いのだ。チャレンジャー企業は、リーダー企業内部の合意形成まで分析を行い、どのようは反応が予想されるのかを検討することも併せて重要なのだ。

参考文献:「経営戦略の思考法」

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