対立構造を想起させるマーケティングコミュニケーションが「人を動かす」

マーケティング

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人間が何かを理解する時、人はものごとを分けることで理解します。よく「分けることは分かること」と言いますが、人間はゴチャゴチャした何の法則性もないものごとをそのまま理解することは出来ない生き物です。

そのため、マーケティングコミュニケーションにおいて、商品サービスを理解してもらうために何かの軸で分けることで消費者に理解してもらおうとする手法はよくあります。

例えば、アップル社の有名なキャッチコピーである「think different」は、言葉こそ一つですが、このコピーを見た人の頭の中に、「他の人と同じことしか考えられない人」と、「人とは違うことを考えることの出来る人」という2つの人間の存在を想起させます。そうすることで、アップル社は人とは違うことを考える会社であり、新しい価値を生み出す会社であることを理解させようとしているのです。

人間は、このように2つに分けることで初めてモノゴトを理解できるようになる生き物なので、マーケティングコミュニケーションを検討するに当たって、どのような軸で自社製品サービスを分けることが最も消費者に理解してもらう可能性が高いのかは非常に重要な検討事項になり得ます。

また、このように2つに分けるやり方は、「なりたくない自分」と「なりたい自分」を明確に区別するやり方とも言えます。つまり、上記のアップル社の「think different」で言えば、「他の人と同じことしか考えられない人」は「なりたくない人」であり、「人とは違うことを考えることの出来る人」は「なりたい自分」と一致します。つまり、2つに分けることで理解しやすくしている一方で、消費者の心の奥底にある「危機感」を刺激し、あなたはどっちだ?と言っているのです。こうすることでアップル社を理解させるだけでなく、アップル社への共感を呼び起こしています。

一方、マーケティングコミュニケーションにおいて消費者に対立構造を想起させず、2つに分類しない場合どのようなことが起きるでしょうか?まず、上記で説明したように人間は2つに分けることで理解できる生き物である以上、その意味を理解しきれない可能性があります。そして、理解しにくいままに明確なメッセージを伝えることは難しいでしょう。

しかし、2つに分けると言っても、その対立構造がターゲット消費者の深層心理に合致していることが最大の条件です。単純に対立構造になっていれば良いというわけではなく、ターゲット消費者の中の対立構造になっているかどうかが大切です。そのため、効果的な対立構造を見つけるには、やはり消費者をよく知っていなければ出来ません。いま、消費者はどんな軸でモノゴトを見る傾向があるのか?など消費者理解が大切なのです。「think different」は、まさにターゲットとする消費者が最も反応する対立構造を見つけ出した例と言えます。

また、話は変わりますが、行動経済学で有名なプロスペクト理論において、人間は「得をすること」よりも「損をすること」の方に強い反応する傾向があると言われています。また、利益を得る場面においても、リスクがあって大きな利益を手に入れることよりも、リスクが小さく、確実に利益を得ることを優先すると言われています。得をしようとする気持ちよりも、損をしないようにする気持ちの方が強いことを表した理論です。

ここにも2つに別けることの意味があるように個人的には感じています。「think different」ではターゲット消費者の「危機感」を刺激していると言いましたが、「こうなりたいよね?」と言うのと同時に「こうはなりたくないよね?」というイメージも消費者に想起させているからこそ効果的だったと考えられます。こうなりたいよね?しか想起させないメッセージよりも効果的だったと言えるのではないでしょうか。

以上、2つに分けること=対立構造は人間が最も理解しやすい形であることと、その対立構造にターゲットの「なりたい自分」と「なりたくない自分」を組み込み、かつ危機感を想起させることで、消費者にメッセージを理解させ、強く印象付けることにつながるということを説明してきました。

私はこのようなことまで考えられていないと人は動かないと思っています。単純にメリットを提示しただけでは人が動かないのは、そのメリットが理解できなかったり、消費者の心に響いていないからだと思います。単純に企業の都合であることも多いように感じます。また、こんな生活いいよね?と提案したころで、やはり人が動くには弱いのではないでしょうか。人はどこかで危機感がなければ動かない生き物です。こうなりたいよね?と同時にこうはなりたくないよね?も必要なのではないでしょうか。

対立構造は、消費者に理解させるのに最も有効な形式であると思いますし、人を行動させる意味でもやりやすい形式であると思います。あなたの会社のターゲット消費者の中にはどんな対立構造があるのでしょうか?そして、どんな対立構造が最も効果を発揮するのか考えてみてはいかがでしょうか。

もちろん、これは一つの考え方であり、他にもいろいろな考え方があります。マーケティングコミュニケーション企画の参考になれば幸いです。