ある記事を読んでいて、非常に面白い商品を見つけた。メモ帳なのだが、めくっていくうちに清水寺や東京タワーが現れてくるのだ。これは非常に面白い!と思ったと同時に、マーケティングの本質を思い起こさせてくれる商品だ!と思った。この商品は「メモ機能」と「アートの機能」を組み合わせた商品であるが、結果として、楽しめる(楽しみな)メモ帳という新しい価値を提供することに成功しているのは、この組み合わせが素晴らしいからである。まだ誰も知らない組み合わせを見つけたことで、メモ帳としての価値を高めたのである。ちなみにこのメモ帳は1つ1万円であるが、売れ切れ状態だそうだ。
しかし、このような何かと何かを組み合わせの商品は世の中には沢山存在するものであり、別に珍しくもなんともない。例えば、「あんぱん」は「あん」と「パン」を組み合わせた商品であり、見方を変えれば、「和」と「洋」を組み合わせた商品である。あんぱんが登場する前には、ジャムとパンを組み合わせて食べることはあったわけで、甘いものとパンを組み合わせるという発想は存在していたのたが、その発想を使って日本の甘いものとパンを組み合わせたことに大きな価値がある。甘いものは、別にジャムだけじゃないし、誰もパンにはジャムを塗らなければならないと決めたわけではないのに、ほとんどの人が何の疑いもなく過ごしていたところにこの発見は大きな価値となったのだ。固定観念に縛られない発想をしたとも言えるかもしれない。
そもそも料理というものは、食材と食材の組み合わせである。いかに食材と食材を組み合わせるかによって料理の価値が決まってくると言える。優秀な料理人というのは、どの食材とどの食材が合うのか、合わないのかを知っているものだ。そして、優秀な料理人は意外な組み合わせを見つけることで価値のある料理を生み出す。
私はマーケティングも同じだと思っている。意外な組み合わせを見つけることで価値ある商品サービスを生み出すのがマーケティングの役割の1つだと思うのだ。今回紹介した「メモ帳」や「あんぱん」のように、誰も考えもしなった組み合わせを見つけることで大きな価値を生み出すことがマーケティングでは出来るのだ。
しかし、何でも組み合わせれば良いというものでもない。料理にも合う食材と合わない食材がある。例えば刺身の後に生クリームは、意外な組み合わせだが、聞いただけでも合わないだろうと思えるように、意外な組み合わせの多くは最悪と言えるようなものばかりである。しかし、だからと言ってメモ帳と仕事というような、誰もが思いつくような組み合わせには価値がないことも誰もが知っている。
つまりは、遠い意外な組み合わせの中に価値は存在するが、近い誰もが思いつくような組み合わせには価値がないということだ。だから、遠い組み合わせを探るような努力をした人でなければ、成功はないともいえるのだ。考えても考えても最悪な組み合わせばかりで嫌になりながらも、そのような中にこそ価値があることを信じて突き進んでいく人間にしか価値ある組み合わせは見つけることが出来ないのだ。
だからこそ、価値ある商品を世の中に出したいと思うのであれば、誰も思いつかないような組み合わせの中から価値あるものを見つけるしかない。その努力や挑戦の中にしか高い価値はないのである。確実な近場で何とかしようとすることに価値はないのである。