論理的思考を磨こうと思って色んな本を読んでみると、どの本でも大体出てくるのがロジックツリーである。このロジックツリーとは、あることを要素分解し、ツリー状に構造化していく方法であり、経営コンサルティング会社をはじめとしたビジネスの様々なシーンで使われる考え方である。また、このロジックツリーは、要素分解する際に、分解した要素同士に重複がなく、モレがない状態(MECE)になっていなければならない。
このロジックツリーの代表例が、利益を分解して構造化したプロフィットツリーだろう。要素に分解して考えることで利益を上げるためにはどの要素に注力することが良いのか、見過ごしてきた要素は何なのか?といったことが分かるようになる。
しかし、このロジックツリーも完ぺきというわけではない。よく言われるのは時間的な考え方がしにくいと言われている点だ。ツリー状に要素分解するまでは良いが、各要素が独立的な要素なのか?それとも他の要素と関係性があるのかが分からないのだ。例えば、プロフィットツリーの「コスト」を要素分解すると「人件費」「光熱費」「減価償却費」「物流費」「広告宣伝費」「R&D費」などに分解することが出来る。しかし、仮にこの会社が設備投資をしたとすると「減価償却費」は増えるが「人件費」「光熱費」といった要素は減るように各々の要素同士には因果関係や相関関係が存在しているのだ。そのため、ロジックツリーで最大の課題と思われた要素が、要素の関係性から見ると問題ではない場合があるのだ。
本来であれば、多くの要素は様々な要素とつながっており、お互いに影響しあっているものだ。そのような中で、会社を静的であることを前提とした問題解決を図ったとしても、上手くいきにくいのは当然ともいえるのだ。これがロジックツリーの弱点ともいえる部分であり、ロジックツリーの弱点を補う考え方が必要とされるようになる。
実際、現代において、1つの考え方・フレームワークで問題の本質を見極めることは不可能であることは広く知られるようになった。見事な問題解決をする人ほど、様々な視点から現象を観察することでより本質的な課題を見つけ、解決していることからも同時に2つ以上の考え方・フレームワーク・視点からモノゴトを考えることは有益であると考えられる。つまり、ロジックツリー以外の考え方も使い考えなければ、仕事の出来る人には追い付けないのだ。
ロジックツリーの弱点である時間的な側面を補うためには、当然ながら時間的な経過を観察できる考え方が必要になる。各要素間が時間が経過することでどのように影響し合っているのかを考えるために、どのような点に注意すれば良いのだろうか?
まずやるべきことは、悪循環を見つけることである。ロジックツリーでは見つけることのできない「循環」や「相関関係」に注意して観察していくことで時間的な側面をカバーすることが出来る。それは素直な感覚からスタートすることもあるし、データからその循環や相関関係を重点的に調べることで見つけることも出来るだろう。
また、他にも参考になるのは、人間の活動には「累進」「反転」「平衡」という3つの特徴があるということだ。「累進」とは、「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、あるステップが次のステップを引き起こしている現象のことである。「反転」とは、一方向にずっと進むのではなく、どこかで底打ちし下降するような現象である。広告宣伝費をどんどん増加させて認知度が上がり続けていたのに、あるポイントで認知度が上昇しなくなるような現象である。「平衡」とは、グローバリズムが広まるとナショナリズムが広まるというような、平衡を保とうとするような現象のことである。
このような点に注意して、分析していくと自社を取り巻く、良循環・悪循環が見えてくる。そして、その中でも最も問題でありそうな要素を特定し、その要素を強めたり、弱めたりするとどのようなことが起きるのかについて考えるのだ。きっと、今まで考えもしなかったようなことが起きるだろう。ロジックツリーに行き詰ったらぜひ一度トライしてみてはいかがだろうか?
ロジックツリーはマーケティングにおいても広く使われているフレームワークである。しかし、マーケティングに限らず私たちがビジネスで相手にするのは、常に変化し続ける顧客たちだ。様々な人から様々な影響を受けて常に変化している顧客たちだ。そのような時間的変化がある人々を相手にしているのに、静的なフレームワークだけで考えることは、よく考えてみるとおかしなものなのだ。これからは、ロジックツリー以外にも時間軸に注目して顧客を観察し、顧客を理解することで新しくより効果のあるマーケティング施策を生み出すことが出来るはずだ。
参考文献:ハーバードビジネスレビュー2018年2月「課題設定は意志から始まる」