バーゲンセールは、短期ていな売上を伸ばす一方で、長期的な売上を押し下げると言われている。「ブランディングの科学」という本では、バーゲンセールなどは将来の売上の前借りであると断言している。
「バーゲンセール」を前にしたとき、消費者の頭の中では何が起きているのだろうか?
消費者は「バーゲンセール」を目にしたとき、頭の中で「損得の思考枠」がアクティブになると私は考えている。そして、バーゲンセールが損得の「得」にあたることだと判断する。そのため、多くの消費者を行動させることが可能になっていると考える。
人は、モノゴトを認識するときに「比較軸」を持ち出すことで判断しようとすることは以前の記事でも書いたが、バーゲンセールの場合は「損得の比較軸」によってバーゲンセールを認識していると考える。きっと多くの人が、バーゲンセール=お得と考えるだろう。それは「損得の比較軸」で判断した結果である。
しかし、この「お得なバーゲンセール」が頻繁に実施されると次第に効果がなくなってくる。なぜか?実は消費者は「損得の比較軸」だけでなく「珍しいかどうかの比較軸」でもバーゲンセールを判断しているからである。このバーゲンセールが「滅多にない」ものなのか、それとも「よくある」のか?という比較軸である。例えば、毎月1日に商品サービスが半額になるバーゲンセールを実施していると、「よくあるバーゲンセール」として認識され、買いたいとは思っていても「翌月の1日でもいいや」となる。
また、「お得なバーゲンセール」が頻繁にあると、平常時に購入することの「損が大きくなる」側面もある。それだけの頻繁にバーゲンセールが実施されている中で平常時に購入することはあまり賢い行動ではない。頻繁なバーゲンセールは、消費者に対して「賢い買い方かどうかの比較軸」をアクティブにさせ、平常時に購入することは「賢くない買い方」であると判断させることにつながるのである。
殆どの消費者は、モノゴトを一つの比較軸で判断することはない。常に複数の比較軸をもってモノゴトを判断しているのである。また、一つの施策(バーゲンセール等)によって様々な比較軸を消費者に思い浮かばせることに繋がることに注意する必要がある。施策を企画するときには、この施策によって消費者に対してどんな比較軸をアクティブにさせるのか?という考え方を持って企画するべきである。
ここまでは、「バーゲンセール」を前にしたときの消費者の頭の中で何が起こっているのかについて述べたが、なぜ長期的には売上を減少さえるのかについては述べていない。
なぜ、バーゲンセールは長期的な売上を押し下げるのだろうか?これは私の個人的な意見だが、「バーゲンセールで購入すると商品サービスの価値が小さくなる」からだと考えている。
非常に素晴らしい商品サービスで、かつ安いのに大きなメリットをもたらす(費用対効果が高い)ものであれば、何も心配することはないと考えるかもしれない。しかし、バーゲンセールを実施した場合、消費者が商品サービスを判断するとき「安く買ったか高く買ったかの比較軸」で商品サービスを判断したときに「安く買った」と判断してしまうことになる。つまり、安く買えた商品に対してはブランド的な意味では高いものは期待できない。高く買ったからこそ高いブランド的価値を提供できる側面もあるのは、高級ブランドに共通するところである。
人は、モノゴトを判断するときに「比較軸」を用いることは前述の通りであるが、「買うときに使った比較軸と判断」が「商品評価の比較軸」に影響を与える。
そのことも踏まえてマーケティングの施策は実施すべきである。どんな買い方をしたのかによって、その後の対応の仕方が変わってくるということだ。